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業務内容
 病院情報システムについて

 阪大病院では1993年の病院の移転から本格的な病院情報システムを構築してきました。

 これまで、それぞれの時代において最新の機能を提案し、オーダエントリーシステム、物流システム、PACS等を導入してきました。2010年1月からは、DACSを活用したペーパレス電子カルテシステムを導入しています。

 そして、2016年1月に電子カルテシステムの更新を行いました。今回は、画像系システムを刷新し、電子カルテにおいては、臨床研究支援や地域医療連携などに関しての新しい仕組みを取り入れています。


 ペーパレス電子カルテの課題
(1) デ−タ入力についての課題

 電子カルテ運用で最も懸念されるのは、診療情報の入力方法です。診療科毎に違った要求があり、このそれぞれに対応できなければなりません。テキストを中心として記録する診療科、各科で行う検査や処置を記録し、図を多用する診療科があります。また、眼科のように、科内で多種類の検査が実施され、科内の検査の指示、結果の記録が必須となる特殊な科もあります。

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1.テンプレート入力

  • 階層構造を持って、入力したデ−タが自然な叙述的表現に自動変換されます。
  • 検体検査結果や患者基本情報を取り込むことができます。
  • 設定により、文書システムや様々なレポートからのデ−タを取り込むことができます(後述)。
  • 計算や入力デ−タを使って処理をすることができます。
  • テンプレートで入力されたデータを他のテンプレートで取り込むことができます。

2.絵を使った記録

  • 絵を良く描く診療科(耳鼻科、産婦人科、泌尿器科、皮膚科、形成外科)では、ペンタブレットを使い、シェーマや取り込んだ画像に書き込む形での診療録が作成できます。
  • 紙カルテをめくるように、記録を閲覧できます。
  • よく使用する言語をスタンプとして登録しておくと、ドラッグアンドドロップ操作で、貼り付けることができます。スタンプは診療科ごとに設定できます。
  • 初診時記録のようなフォーマットをあらかじめ電子カルテに登録しておくことができます。

3.画像の取り込み

  • 各科で行う検査の画像(超音波、内視鏡など)を取り込んで保存します。
  • デジタルカメラの画像を取り込むこともできます。
  • 動画の取り込みも可能です。
  • 取り込んだ画像に対して、書き込みをすることができます。

4.デジタルペン

  • 手書きの記録を望まれる場合には、デジタルペンでの入力も可能としています。
  • デジタルペンは、特殊な紙に特殊なペンで書くと、これがそのまま画面にとりこまれます。

5.文書システムの機能の充実

  • 当院では、多くの文書フォーム(現時点で237種類)があります。初診時・入院時記録、入院診療計画書、栄養管理計画書、退院時サマリ、各種診断書、検査レポート、手術レポートなどです。
  • 文書フォームを作成し、文書作成支援機能を設定すると、便利に文書が作成できます。
  • 患者基本情報、検体検査結果、処方内容、各種オーダ情報取り込むことができます。
  • 読影医が診断した所見情報や看護師が看護ケアで入力した身長、体重、バイタルのデータを取り込むことができ、情報の共有および引用ができます。
  • 文書からテンプレートを呼び出し、登録できます。テンプレートの高度の処理機能を使って小児の標準身長や体重を求めたり、取り込んだデ−タから自動判定する機能などが設定できます。
  • 初診時記録で記載した現病歴を退院時サマリに引用するような文書間の連携ができます。

6.スキャン取り込み

  • 問診票、同意書・説明書、他院からの紹介状はスキャン取り込みします。
  • スキャンセンターを設置して、中央でスキャンする運用を確立しました。
  • 本院では多種類(現時点で 種類)の説明書がありますが、これをシステムに取り込みプリント出力できるようにしています。患者のサインが入った同意書をスキャンで取り込むと、これに対となる説明書が電子カルテに取り込まれる仕組みとなっています。
  • e文書法に則って登録されます(電子署名、タイムスタンプ付きで保存)ので、紙の記録を保存しておく必要はありません。

(2) 病棟運用の合理化についての課題

 これまでのシステムは、外来を中心とした機能であったと思います。病棟の運用は複雑で、オーダとは別に紙の指示簿があり、このため、実施記録(服薬記録、注射の実施記録、計測記録)は紙に記録され、これを集約した熱型表も紙の記録となっていました。ペーパレス電子カルテを実現させるためには、熱型表を電子化する必要があります。正しい熱型表を電子的に作成するためには、実施記録が入力されなければなりません。実施記録が正しく入力できるようにするためには、指示が正しくコンピュータで登録できることが必要です。

 指示が電子化されることにより、正しい実施記録がコンピュータに記録され、正しい熱型表が作成されることになります。従来の電子カルテシステムは、指示の電子化機能が不十分で、結果的に情報の転記が発生し、記録が不正確になり混乱を招いていたと思います。当院でペーパレス電子カルテを実現するに際し、この部分のかなり注力しています。

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1.指示の電子化

 処方(内服・外用)、注射、一般指示にそれぞれカレンダー画面を作ることにより、最新の指示や指示変更履歴が明確になりました。

  • 処方(内服・外用)
    新規処方は処方オーダ=指示と考え、処方オーダから指示を自動作成します。
    指示変更は指示カレンダーから行い、薬の不足が生じた場合に追加オーダを行います。
    指示カレンダーでオーダ内容と指示内容の差異表示が可能です。
    指示カレンダーは縦軸に薬剤名、横軸に日付とし、セルごとに1日量や1回量を表示します。
    処方オーダがされていない指示はグレー表示され、継続処方オーダを促します。
    色識別で、指示受けの進捗状況や入院科以外の処方、持参薬の区別ができます。
  • 注射
    注射カレンダーでは、総投与量の決まっているスポット等の指示は、同一Rpを回数分の行に分け、各行に実施時間と速度が表示されます。交換して繋ぐ持続点滴は、1行に集約され、Rpの投与量と速度が表示されます。また、速度変更やルート変更だけでなく、速度と回数の表示切り替えや、速度入力による終了時間の自動計算等の機能があります。
  • 一般指示
    一般指示(安静度やバイタル、処置等)は、主にテンプレートを使用して、指示出しを行います。テンプレートには、入院時セットや術前セット等があり、診療科によって、あらかじめ既定値を設定しておくことが可能です。一般指示カレンダーには、項目ごとに表示されます。このため、入院時セットで入力した指示も、指示変更時は項目ごとの変更が可能です。

2.絵を使った記録

 患者ToDo、病棟ToDoにあがってくる未受け指示に対し、右クリックで指示受けを行います。実施入力した内容は、熱計表に反映されます。

  • 処方(内服・外用)
    指示受け時に、オーダ内容と指示内容を「処方カレンダー画面」で見比べることができます。実施入力画面では、指示が反映されており、選択した患者の処方を一括実施(配薬及び服薬)することができます。また、処方実施画面では、実施時のコメント入力ができます。
  • 注射
    実施入力は、PDAやパソコン本体に接続してあるバーコードリーダを使用し、バーコードによる患者および指示内容の照合を行います。未受けの指示変更があった場合は、ここでチェックできます。速度変更に関しては、注射実績画面で行うことができます。
  • 一般指示
    指示受け時に、日々の看護ケアが必要な項目(バイタルサイン測定、観察処置)は看護ケアに連動し、自動で看護オーダが発生します。指示受け内容の転記作業が不要となりました。医事算定が発生するものは、実施時に自動的に課金されます。このように一般指示に関しては、指示出し、指示受け、看護オーダ、実施、課金が一連の流れで進みます。

3.看護支援機能

  • 看護計画からケアへの連動
    看護問題、看護計画を立案した場合、立案した計画は実施しなければなりません。 今までの電子カルテでは、立案した看護計画をもとに、ケアを考えて、実施するための看護オーダをたてるという2度手間なシステムになっていました。今回、計画を立案すれば、それがそのままケア(看護オーダ)として登録され、実施できるようにしました。
  • 実施忘れの防止
    看護ケアや注射、服薬などやるべき事をタスク一覧として表示し、その進捗管理をする事で実施忘れを防止します。勤務終了時に未実施のものを表示させ、自分で忘れているものがないかの確認ができます。
  • 看護必要度
    看護ケアで入力したものを取り込み、電子カルテ内で患者分類別構成などの分析を行います。看護必要度は、各病棟の「病棟管理日誌」に表示されますので、自病棟の必要度を把握できるようになっています。
  • 患者診療予定票
    オーダが入っている検査や、採血などが患者へのお知らせ用紙に自動的に出力されます。

4.熱型表

  • 注射・内服の実施内容の表示
    注射・内服の実施は、オーダではなく指示に基づいた実施内容を表示します。また、表示イメージは、紙の熱計表に→や速度変更を手書きしていたイメージを再現しました。注射の希釈薬は、1薬剤として表示せずに、元になる薬剤とグループ化しました。薬剤の速度に加えて、投与量のガンマ値の表示選択も可能としました。
  • 医師コメント・看護師コメント
    熱計表は自動作成されるメリットがある半面、自由に書き込むことができず、付箋の使用か、別ページの経過記録入力で代用していました。今回、医師コメント・看護師コメントというフリー入力スペースを用意したことにより、熱計表の中に表示したい事柄が自由に書き込めるようになりました。
  • 重症熱型表
    一般熱計表の既定値は1画面1週間で、重症患者の表示量にはそぐわないため、毎回、1画面を1日とし、1日を2時間ごとに区切った重症熱計表へマニュアルで表示切り替えを行う必要がありました。また、マニュアルで表示切り替えを行うことは、全ての人が同じ内容を見ているという前提が担保されておらず、情報共有に不安がありました。そこで、熱計表画面から、医師が「重症」指示を行うと、指示期間は重症熱計表が既定値として表示されるシステムとしました。

5.重症系の指示

重症患者については、多種類の持続薬が投与され、適宜流速を変更する等の指示が出される特徴があります。こした特殊な指示に対応できるシステムを構築しています。

6.ToDo機能

  • 医師ToDo … その医師がやるべきことリスト(点滅表示により閲覧を促す)
  • 患者ToDo … その患者に対して、やるべきことリスト(患者選択時初期表示)

 ToDo内容は、自動発生する入退院時に必須な文書の通知機能(入院診療計画書、栄養管理計画書、手術記録、退院時サマリなど)、処方切れ通知、疑義照会、カウンターサイン依頼、フリーToDo機能等があります。文書作成や疑義回答、カウンターサインの承認はToDo画面から行う事が可能です。


(3) 診療の支援
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1.化学療法プロトコールシステム

  • 事前に登録したプロトコールを患者さんに適応することにより、注射・内外用薬のオーダが発行されます。
  • プロトコール適応時に標準的な投与量計算や投与スケジュールを表示します。
  • プロトコール適応後の変更や入院から外来への継続等が可能です。

2.クリニカルパスの電子化

  • 説明・指導・確認欄を追加(医師のチェックが可能となりました)
  • 説明・指導欄・確認からの入力テンプレート呼び出し機能の追加
  • エディタでの指示テンプレート使用可能
  • アウトカムに関連したアセスメントの設定

3.疾病管理機能

  • 医学管理料に対応する患者であるかどうかを知らせることができます。
  • 対象患者について、検査結果等のデータを取り込み参照することができます。
  • 医学管理料を算定する際にカルテに記載しなければならない指導内容等をテンプレートで入力してもらう入力支援をおこなっています。
  • 医事課では医学管理料の未算定一覧を見ることができ経営指標の一つとなります。

4.病名登録支援

  • 処方オーダ、検体検査オーダの登録時に病名登録の支援をします。
  • オーダ内容に応じた病名候補リストをピックアップし、医師は、病名候補リストから選択し病名登録ができます。この機能によって病名の登録漏れを防ぎます。
  • 処方、検査、病名候補のマスタは毎月更新データが配信されています。

5.禁忌等の情報提供

  • 検体検査結果や処方内容から、腎機能や肝疾患、糖尿病を判定し、注意すべき薬剤、禁忌となる薬剤がオーダされた場合に警告し、警告の理由を示します。

(4) 診療情報の閲覧

 新病院情報システムは、実際にはマルチベンダーで多種類のシステムで構成されています。しかし、異なるシステムの集合であっても、一人の患者の診療情報は、統合して閲覧できなければ、診療録としての役割を果たしているとは言えません。新システムでは、診療デ−タ、文書、画像のそれぞれに統合して閲覧できる機能を備えています。

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1.デ−タの閲覧

  • フローシート
  • テンプレートの時系列表示

2.文書の閲覧

  • Matrix View … 登録文書を、時系列/文書種毎に表示(患者の病歴を鳥瞰できます)
  • Tree View  … 登録文書を、様々な分類方法でリスト化して表示(目的とする文書をすぐに探すことができます)

3.画像情報の閲覧

  • 地域連携としての院外画像の取り込みおよび当院の画像提供をシステムとして本格整備
  • 3D画像、Thin Slice画像に対応した院内全域規模の高速3D-PACSと、それを支える安全・長期運用を考慮した大容量サーバ
  • 整形外科などの特殊用途や放射線部以外の画像も広くカバーする細かく配慮したPACSの構築

(5) 診療情報管理についての課題

 診療情報は、数十年の長期に渡って見読性が確保されなければなりません。テキストデ−タについては、デ−タと人が読める形に表示するプログラムが必要ですが、通常のシステムの場合、プログラムを長期に維持することは困難です。そこで、全てのシステムで生成される文書について、プリント出力イメージをPDFに変換して保存する仕組みを導入しています。このシステムは、日常の処理する機能とは独立しているため、これらがシステム障害時を起こした際にも、過去の記録を閲覧できる機能を保障します。また、全ての記録が集約されているため、開示請求があった場合でも、ここから診療録を出力することで、もれのない開示ができます。

 患者の病歴は、システムの寿命よりも長い期間の保存が必要になります。こうしたニーズに対応するため、全ての文書情報をPDFに変換して集中管理するシステムを導入しています。これにより、システム提供ベンダーが変更になっても、過去の記録が失われることがありません。

(6) 収集情報の活用についての課題

 当院では、1995年からデ−タウェアハウスを構築し、診療情報のデ−タを分析可能な形で蓄積しています。これまで、診療情報の電子化の範囲が広がるにつれ、蓄積するデ−タ種も増やしてきました。新システムでは全ての診療情報を電子化しますが、その殆どのデ−タを、デ−タウェアハウスに蓄積して、分析に対象とすることにこだわって、その仕組みを作っています。文書作成システムで登録されるデ−タ、病理検査レポート、放射線検査レポート、生理検査レポート、その他の各種検査レポートのデ−タから分析対象のデ−タを抽出してデ−タウェアハウスに格納しています。また、特に分析が必要なデ−タについてはテンプレートを使って入力しますと、細かな粒度のデ−タを、デ−タウェアハウスに取り込むことができます。

 今回のシステムはマルチベンダーのシステム構成となっていますが、あるシステムで入力したデ−タを患者基本情報として保存したり、別の文書で登録したデ−タを、別のシス手の文書に取り込みたいなどのニーズがあります。こうしたことを可能とするために、共有デ−タベースを構築し、これを介して異なるベンダーのシステム間でデ−タの交換ができる仕組みを構築しました。

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1.共有デ−タベースによるシステム間でのデ−タ共有

  • 異なるベンダーで作成された文書内のデ−タを共通のXMLフォームで収集し、共有デ−タDBに登録します。文書システムで必要なデ−タをここから取り込むことができます。
  • 身長や体重など、文書システムで登録されたデ−タを、患者基本情報DBに登録することができ、他のシステムで利用することができます。

2.DWH、デ−タマートによる臨床研究の支援

  • DWHから自動抽出プログラムを設定することで、診療科が必要とするDB(データマート)を構築することができます。
  • ユーザは、常時必要なデータマートのみを閲覧、抽出することができます。
  • データマートは患者個人情報を匿名化することができます。

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