代表的な検査について

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RI(核医学)検査

核医学検査とは

核医学とはごく微量の放射性同位元素(Radioisotope、ラジオアイソトープ、または略してRIまたはアイソトープといいます。) を目印としてつけた医薬品を用い、病気の診断や治療をする放射線医学の専門分野です。核医学診断の対象となる疾患は、心臓、脳、呼吸器、消化器、腎尿路系、内分泌疾患、骨関節 など多岐にわたっており、さまざまな病態や機能の診断が可能です。アイソトープで目印をつけた薬を体内に投与しますと、特定の臓器や組織に取り込まれ、そこで放射線を出します。これを「ガンマカメラ(シンチレーションカメラ)」や「PET(ペット)」と呼ばれる特別なカメラで測定し、その分布を画像にします。放射能の測定は大変高い感度で行えますので、ごく微量のアイソトープで安全に、苦痛もなく、身体の各部分の働きや化学的変化を画像にすることができるのです。疾患によっては、 他の検査法よりも早く見つけることができるのも特徴の一つです。また、アイソトープは診断のほか治療にも応用され、甲状腺機能亢進症や甲状腺がんの治療、転移性骨腫瘍に対する疼痛緩和療法、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌の治療、および低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫の治療などにも用いられています。

当院における核医学診療の特徴

核医学部門には核医学診療科の専門医をはじめ、放射線科・循環器内科・内分泌代謝内科・乳腺外科・皮膚科・泌尿器科 など多くの専門分野の医師が検査に従事しております。また、装置の操作や画像作成・放射線管理に従事する診療放射線技師は専任4名を中心にして5~6名体制で日々の診療に当たっております。
検査装置はガンマカメラ4台(うちSPECT-CT2台)、PET-CT3台を保有しています。SPECT-CT装置、PET-CT装置ともに同一ベッドでCT装置とつながっているため、CTで得られた形態情報を融合した高精度な診断が可能です。 一般核医学検査としては骨シンチ、心筋シンチ、脳血流シンチなどをはじめとする全身各部の検査、PET検査としてはFDG(ブドウ糖類似物質)を用いた腫瘍PET-CT検査、脳・心筋糖代謝検査、放射性酸素で標識したガスや水を用いる脳循環代謝検査を行っています。院内サイクロトロンという短寿命 のアイソトープを作る装置を設置しており、日々検査予定に合わせて放射性医薬品を高い清浄度で管理されたクリーンルームで合成しています。この標識合成室には専任のオペレータと薬剤師が勤務しております。

Symbia Intevo Discovery710 Eminence 標識合成室

代表的な核医学検査について

身体の様々な部位で種々の核医学検査が行われています。核医学検査は例えば、骨シンチグラフィのようにシンチグラフィ(または略してシンチ)と名前がついていますが、これは体内に投与された放射性医薬品から出てくる放射線(ガンマ線)を専用のカメラで検出した際にその部位と量に応じたシンチレーション(光)が発生し、それを画像化するため、そのように名付けられています。骨シンチ以外にも、ガリウム、肺血流、シャント率、肺換気、腎、レノグラム、甲状腺、甲状腺摂取率測定、副甲状腺、肝アシアロ、肝胆道、唾液腺、メッケル、胃機能、心筋血流運動負荷・薬剤負荷・安静時、心筋脂肪酸代謝、心筋交感神経機能、心プール、出血、脳血流、メラノーマ、脳ベンゾジアゼピンレセプター、脳ドパミントランスポーター、脳槽、骨髄、副腎皮質、副腎髄質、MIBG腫瘍、タリウム腫瘍、センチネルリンパ節、ソマトスタチン受容体など多くのシンチグラフィ検査があります。またポジトロン放出核種を利用したPET検査にも色々あり、腫瘍FDG-PET、脳FDG-PET、心臓FDG-PET、脳O-15ガスPET、心筋血流アンモニアPET などがあります。
その中でも代表的な検査を下記に記載します。

●骨シンチ
骨シンチは悪性腫瘍の骨転移の診断に有用です。薬剤の注射から約3時間以降に検査します。乳癌、前立腺癌、肺癌は骨転移の頻度が高いので、この検査がよく行われます。また、骨の代謝亢進に対しても非常に感度が高く、病巣を検出することができます。

(骨転移例):乳癌 多発骨転移
治療前 治療後

装置の種類によっては、従来よりも画質の良い骨シンチのSPECT画像も得られるようになり、必要に応じて追加で撮像しています。
仙骨骨肉腫SPECT
▲骨シンチ 仙骨骨肉腫SPECT画像(左図:冠状断像、右図:矢状断像)
頭蓋骨SPECT
▲骨シンチ 頭蓋骨SPECT画像(左図:SPECT画像、右図:SPECTとCTの重ね合わせ画像)
腓骨SPECT
▲骨シンチ 腓骨SPECT画像(左図:SPECT画像、中央図:SPECTとCTの重ね合わせ画像、右図:CT画像)腓骨に沿った骨浸潤が見られる。

●心筋血流シンチ
心臓の筋肉に酸素・栄養を供給する冠動脈が狭窄すると、心筋は虚血状態になり、その血流が停止すると心臓は心筋梗塞に陥ります。これらの病態判定にこの検査は非常に有用です。通常、エルゴメータ(エアロバイク)をこぎ心臓に負荷(運動負荷)をかけてから放射性医薬品を注射し、検査を行います。また、運動負荷の約3時間後に負荷をかけず安静にした状態で放射性医薬品を注射し2回目の検査を行って、虚血・梗塞の判定を行います。

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●脳血流シンチ
脳血管の障害により引き起こされる脳の虚血状態を早期に検出することができます。また、脳梗塞に陥った部位の広がりの判定にも利用されます。アルツハイマー病などの認知症の診断、てんかんの発作時の焦点検索にも有用な検査です。

脳梗塞例 X線CT像

●脳ドパミントランスポーターシンチ
この検査はドパミン神経の変性や脱落を画像化し、パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症の診断に有用です。ドパミントランスポーターは黒質線条体ドパミン神経の終末部に強く発現します。ドパミントランスポーターに高い親和性を持つ化合物にRIで標識した薬剤を注射し、約3時間後に検査を 行います。

パーキンソン病疑い
  ▲正常例(線条体への集積低下無し) ▲パーキンソン病疑い(両側被殻後部への集積低下あり)

●ソマトスタチン受容体シンチ(神経内分泌腫瘍シンチ)
インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、カルチノイドなどの神経内分泌腫瘍の診断に有用です。この腫瘍はソマトスタチン受容体が高頻度に発現している特徴を利用し、ソマトスタチンの類似物質であるペンテトレオチドにRIで標識した薬剤を注射し、約4時間と24時間後に検査(長時間かけて撮像) を行います。この薬剤は発注後に海外から取り寄せるため、検査日の8日前以降はキャンセルできません。もしキャンセルが決まれば、すぐにご連絡ください。

ソマトスタチン受容体シンチ
▲RI投与から24時間後の全身像
SPECTとCTの重ね合わせ
▲RI投与から24時間後の青点線レベルの横断像(左図:SPECT画像、中央図:SPECTとCTの重ね合わせ画像、右図:CT画像) 肝臓や膵体・尾部の病変に一致するRIの集積上昇が見られる。

●肺血流シンチ
この検査は肺動脈に血栓が詰まって引き起こされる肺塞栓症の診断に有用です。肺塞栓症は通常のレントゲン写真では診断が難しいことが多いからです。 また、肺癌手術前の肺血流評価や先天的な奇形に伴う動静脈シャントの程度評価に用いられることもあります。

肺梗塞例
治療前 㰎?}!?]v? width=

●腎レノグラム
腎機能の状態を左右の腎臓を別々に評価することができます。放射性医薬品を注射開始と同時に検査を開始して、約20分間連続してデータ収集をして解析しグラフ化して結果を出します。また、腎移植手術におけるドナーの評価、術後のレシピエントの経過観察にも利用されています。

腎不全症例
急性腎不全治療前 急性腎不全治療後

●腫瘍PET-CT
腫瘍組織は一般的に増殖、代謝を盛んに行っており、そのために多くのフドウ糖を取り込む性質があります。放射性のフッ素で標識したFDG(ブドウ糖類似物質)を注射すると、腫瘍部位に取り込まれるので腫瘍の有無、広がり、転移巣の検索に非常に有用です。CTとの併用によりPET画像とCT像を重ね合わせて診断をしますので、精度良く調べることが可能です。

悪性腫瘍症例
FDG-PET検査
PET-CT MIP(動画)

PET-CTにおける呼吸同期撮影

核医学検査を受けられる患者様へ

●一般的な注意事項
検査は全て予約制で検査時刻も正確に決まっておりますので、必ず予約日時にお越し下さい。もしキャンセルされる場合には前日17時までに必ず電話連絡をお願いします。(06-6879-5111 内線6860) 検査予約の時に主治医から検査についての説明がありますので、それを守って下さい。 下記に該当する患者様は予約の際、主治医にお知らせ下さい。


・ 妊娠中の方、妊娠の可能性のある方 、授乳中の方
・ 長時間(約30分)の仰向けの姿勢がつらい方
・ 閉所恐怖症など狭い場所が苦手な方
・ アレルギーのある方


●前処置について
主な前処置が必要な検査を記載します。


・心筋シンチ
検査当日の朝食は絶食です。飲水は可ですが、お茶やコーヒーなどカフェインを含む飲料は控えて下さい。日常飲んでいるお薬については主治医の指示に従って下さい。運動負荷検査の場合は自転車エルゴメータ(エアロバイク) をこいでもらいますので、汗拭きタオル、運動しやすい服を御持参下さい。


・ガリウムシンチ
金曜日の午前に放射性医薬品を注射します。土曜、日曜の眠前に下剤を服用して下さい。日曜の昼食、夕食は流動食にして下さい。検査当日の朝、十分に排便して下さい。朝食は食べてかまいません。これらの前処置薬、流動食は予約時に主治医により処方されます。


・腎シンチ(レノグラム)
検査直前に水分300cc程度を飲んでいただきます。 お茶、スポーツドリンクなど御持参下さい。排尿後に検査を開始します。また、病状により飲水制限、排尿困難等がある方は検査担当者にお申出ください。


・甲状腺シンチ
検査日の1週間前よりヨード制限が必要です。海藻類(昆布、わかめ、寒天、ようかん)、昆布だし入りの食品の摂取は禁止です。ヨードチンキ、イソジン、ルゴール液、ヨード系造影剤の使用もできません。検査当日の朝食は絶食でお越し下さい。


・腫瘍PET-CT、脳FDG-PET
検査開始前、最低4時間の絶食が必要です。午前の予約の方は朝食絶食で、午後の方は早めに朝食を摂り、昼食は絶食です。


・心臓FDG-PET
検査目的により、絶食時間等の前処置が異なりますので、主治医の指示に従ってください。

●他の病院から紹介されて検査を受けるには
御紹介される患者さんのために、毎週月曜日午前に核医学診療科外来を行なっております。
紹介状とそれまでの検査データ・画像を御持参ください。検査の必要性を確認し検査を予約いたします。
検査の内容、費用、検査前の準備をお話いたします。 地下1階の放射線科外来にお越し下さい。

核医学Q&A よくある質問にお答えします

核医学検査(アイソトープ検査)とはどんな検査ですか?

核医学検査とは、病院によってはアイソトープ検査やRI(アールアイ)検査とも呼ばれていて、微量の放射性同位元素(ラジオアイソトープ)で目印をつけた薬(放射性医薬品)を使って病気の有無を調べる検査方法のことです。すなわち、ある特定の臓器や組織に非常に強い親和性をもつ薬剤に目印としてアイソトープをつけて投与すると、目的とする臓器に集まります。その医薬品につけられたアイソトープから放射線がでています。専用のカメラを用いますと一連の画像として写すことができます。この画像から臓器の形や働きがどのようになっているかがわかります。核医学検査の専門医がこの画像を解析して、病気があるかないか、どのようになっているかを調べます。

核医学検査で使う薬とはどんなものですか?

この検査に用いられる薬を放射性医薬品といいます。普通の医薬品と異なり、γ(ガンマ)線などの放射線を放出して減衰していくラジオアイソトープを含む薬品で、時間の経過とともに効力を失います。また専用の施設において放射線の取扱いに習熟した専門医が使用するよう法的に規制されています。
この薬は患者さんに直接注射したり飲んでもらったりして検査をするインビボ検査に使用します。


●インビボ検査用放射性医薬品とは?
直接患者さんの体内に放射性同位元素が入るわけですから、受ける放射線ができるだけ少ない薬が選ばれます。そのためには半減期が短く、体外に早く排泄されるもの、できるだけ弱いガンマ線のみだすものが望ましいとされています。このような条件で最も多く用いられているアイソトープはテクネチウム-99m、ヨウ素-123、タリウム-201、ガリウム-67などで、半減期は6時間~3日と短く、多くの場合、急速に体外に排泄されるものです。これらの薬は脳梗塞、認知症、心筋梗塞、狭心症、悪性腫瘍、転移性骨腫瘍など多くの病気の診断に利用されています。


PET(ペット)検査を新聞やテレビで見かけたことがあります。PET検査ってなんですか?

近年PET(ペット)とか、ポジトロンCTと呼ばれる検査が一部の病院や検診センターで行われるようになりましたが、これもアイソトープを使う核医学検査の一つです。限られた施設でしか行われていない検査ですが、脳や心臓の働きを調べたり、がんの病巣を細かく探る精密検査として利用されたりします。


●ふつうのアイソトープ検査とどこが違うのですか?
PET検査では酸素、炭素、窒素などのアイソトープを使って検査をします。これらのアイソトープはポジトロン(陽電子)と呼ばれる放射線を出すのですが、アイソトープの寿命がとても短いのが特徴です。放射能が半分に減る時間が最も短いものですと2分、比較的長いアイソトープでも2時間弱しかありません。寿命が短いので、それぞれの病院の中でサイクロトロンという装置を使ってアイソトープを作っています。作られたアイソトープはすぐになくなってしまうので急いで検査をする必要がありますが、検査そのものはふつうの核医学検査とあまり変わりません。


●どんな利点がありますか?
酸素、炭素、窒素などは私たちの体を構成している元素です。そのアイソトープで印をつけたブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸、一酸化炭素などを注射したり吸入すると、これらの元素で目印された物質がどのように使われているかを断層像として撮影できます。そこで脳や心臓等の働きを探ることができる特徴があります。例えば、ボケで脳のどの部分の働きが落ちているとか、脳卒中や心筋梗塞などで血管がつまって血液が流れにくくなった時に、その部分がどの程度生きているかを調べるのに役立ちます。


●どこでPET検査が受けられますか?
PET検査はアイソトープの製造に多くの費用がかかるので、実施できる施設はそう多くはありません。近年、放射性医薬品製造メーカからFDG(ブドウ糖類似物質)が供給されるようになり、検査施設は増加の傾向にあります。現在はほとんどの悪性腫瘍の診断において健康保険での診療が認められています。当院では健康診断目的での検査は行っておりませんが、かかりつけの病院からの紹介状をお持ちになり、当院に受診され健康保険適応と判断される場合には検査を受けて頂けます。健康診断目的の場合は最寄りのPET検診センターにお問い合わせ下さい。

核医学検査の段取りはどのように行われているのですか?

検査の予約、前処置、検査実施、結果のお知らせなどは他の検査とよく似ています。


●検査予約は?
核医学検査は全て予約検査です。用いる放射性医薬品には半減期があり、その有効期限は当日限りのものが多いためです。検査の緊急度、目的、検査の混み具合にもよりますが、検査は申し込んでから2, 3日~1, 2週間かかる場合が多いようです。検査に必要な前処置と検査に要する日数、時間などを聞いておくことが大切です。


●検査の前処置は?
多くの核医学検査では前処置が不用です。しかし検査の性質上、目的の臓器にくすりが集まるまで2~3時間待って頂いたり、朝の絶食、服用中のお薬を検査終了まで一時中止する場合もあります。例えば甲状腺の検査では1週間前から検査終了まで海藻など、ヨウ素摂取を禁止されることがあります。予約の時によく聞いておきましょう。(前処置の項をご参照下さい。)


●核医学検査の方法は?
多くの場合静脈注射かあるいはカプセルを経口で服用します。検査は専用ベッドの上でCT検査、MRI検査と同じような仰向けの体位で行われます。検査で来院されてから1~2時間で終了する場合が多いのですが、なかには1日または2~3日後にもう一度来て頂くこともあります。


●検査の後は?
放射線による副作用はありません。しかし薬によるものや、注射自体による影響などがまれに(10万人に1.3人程度)報告されています。もし検査途中で気分が悪くなったり、胸が苦しくなることがあれば遠慮なく医師、技師、看護師に知らせてください。


●核医学検査の結果は?
核医学の専門の医師が診断をつけますので、検査結果の説明は後日になることが多いです。

核医学検査を受けましたが、放射線被曝が心配です。子供ができなくなることはないですか?

男性の場合も女性の場合も、核医学検査を受けたことが原因で子供ができなくなることはありません。また核医学検査を受けたときに仮に妊娠していたとしても、核医学検査で受けた放射線が原因で胎児に影響が現れることもありませんので心配いりません。


●放射線による不妊が発生する線量と核医学検査の関係は?
卵巣あるいは睾丸に数百ミリグレイ以上の放射線を受けた場合には、一時的に子供ができにくくなることがあります。永久に子供ができなくなるのは卵巣や睾丸に数千ミリグレイ以上の放射線を受けた時です。卵巣あるいは睾丸に受けた線量がこれよりも低い場合には不妊が起こることはありません。核医学検査の種類によって卵巣や睾丸の受ける線量は異なりますが、どのような核医学検査でも卵巣や睾丸の線量が数百ミリグレイを越えることはありません。したがって核医学検査が原因で不妊になることはありません。


●胎児への影響は?
核医学検査が行われたときに妊娠しておりますと胎児が放射線を受ける可能性があります。しかし胎児に奇形や大脳の発達の遅れがおこるのは、胎児が百ミリグレイ以上の放射線を受けた場合です。胎児の受ける線量は核医学検査の種類や妊娠の時期によって異なりますが、いずれの検査の場合も胎児の線量が百ミリグレイを越えることはありません。したがって仮に妊娠中に核医学検査を受けたとしても胎児に奇形などの影響が発生することはありません。