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check_boxてんかんに伴う精神症状について

  • てんかんを持つ患者さんは、てんかん発作に加え、さまざまな精神症状を併発し、それによる生活への影響が見られることがあります。患者さんによっては、てんかん発作のコントロールが良好でも、併発した精神症状でお困りになる方もおられます。てんかんを持つ患者さんにどの程度の頻度で精神症状が現れるかは諸説ありますが、20-30%くらい存在するのではないかと考えられています。
  • てんかんに伴う精神症状には、①てんかん病態による要因②心理社会的要因③医原性の要因、が関係しています。
    ①のてんかん病態による要因というのは、てんかんという脳の病気があるために、脳の機能異常として同時に精神症状も出現しうるということを意味します。
    ②の心理社会的要因というのは、てんかんを持つ患者さんも、そうでない人も一様に生活上のストレスは存在するため、そうしたストレスを契機に精神症状が現れることがあるという意味です。
    ③の医原性の要因というのは、てんかんの治療のために抗てんかん薬を多くの患者さんは服用されていますが、抗てんかん薬の副作用として精神症状が現れることがあります。
    これらの要因は複数が同時に存在することもあり、患者さんごとにどの要因が重要かを判断して、個別に対応する必要があります。
  • こうした精神症状について、深刻なケースで精神医学的な対応が必要になることがあります。精神症状の種類としては、うつ状態幻覚妄想状態心因性発作(解離症状)などがよく見られます。
  • うつ状態というのは、気分が落ち込んで悲観的な考えにとらわれたり、意欲や楽しいという感情が低下して、普段、普通にできていることができなくなることを指しています。うつ状態の治療には、生活上のストレス因子を調整したり、抗うつ剤を使用することで治療します。抗てんかん薬の副作用でうつ状態が生じることもあり、その場合には抗てんかん薬を減量したり、変更することもあります。
  • 幻覚妄想状態というのは、他の人に聞こえない声が聞こえたり(幻聴)、他の人に見えないものが見えたり(幻視)、事実とは異なる考えを信じ込んでしまって訂正が効かない状態(妄想)が出現します。幻覚妄想状態の治療は抗精神病薬の服用が主体になりますが、生活上のストレス因子を調整することも必要になります。抗てんかん薬の副作用で幻覚妄想状態が生じることもあり、その場合には抗てんかん薬を減量したり、変更することもあります。
  • 心因性発作(解離症状)というのは、外見上はてんかん発作に似ているものの、発作症状や脳波などの検査でてんかん発作の特徴が見られないものをいいます。主にストレス因子に関連して出現しますが、ストレス因子が明らかでない方もおられます。てんかん発作と心因性発作は別の病態ですので、てんかん発作のみの方、心因性発作のみの方、てんかん発作と心因性発作の両方をお持ちの方がおられます。それぞれに対して個別の対応が必要になります。心因性発作の治療は、まずは発作と関連するストレス因子を調整しますが、長期的にはストレスへの対応能力を伸ばしていくことで、発作を起こしにくくすることが目標になります。薬剤は不眠やうつ状態などが併存する場合に使用することもありますが、心因性発作そのものに対しては薬剤の効果は限定的です。

大阪大学医学部附属病院てんかんセンターでは、てんかんを持つ患者さんの精神症状に対する相談を行い、必要に応じて精神症状の治療が併行して行えるように支援しています。