令和7年8月22日

大阪大学医学部附属病院
中央クオリティマネジメント部
教授・部長 中島 和江

ご案内
令和7年度国公私立大学附属病院医療安全セミナー特別企画【国際フォーラム】
レジリエント・ヘルスケアの実現ー境界を超えて協働するー

 平素より本学の臨床・教育・研究活動等にご理解とご協力を賜り御礼申し上げます。
 このたび、令和7年度国公私立大学附属病院医療安全セミナー特別企画【国際フォーラム】を
開催いたします。本セミナーは、平成16年度から大阪大学主催、文部科学省後援で毎年実施し、
国公私立大学附属病院において医療安全に関わる多職種の方にご参加頂いております。今回の
企画は、我が国に医療安全学が導入されてから25年の節目を迎えるにあたり、特別フォーラムと
して国内外の最新の知見、臨床の実践例を皆様にお届けするものです。
 各界の安全マネジメントは、インシデント事例を起点に、スイスチーズモデルに代表されるようなリ
ニアな事故発生モデルに基づき、事故原因の特定と再発防止策を講じることから出発しました。
以来、変化や制約が殆どないスタティック(静的)な環境を前提とするこの活動は、多くの医療機関
において主軸のアプローチとして展開されるに至りました。一方で、あらゆるものが変動し、不確実
で膨大な機能が複雑につながる今日の社会においては、この方法のみで安全を確保することに限
界があることが、さまざまな社会技術システムにおいて認識されるようになりました。レジリエンス・エ
ンジニアリング理論は、動的でノンリニア(非線形)なシステムを前提とした統合的アプローチであ
り、システムの構成要素間の相互作用に着目し、システム全体の振る舞いを理解する科学的アプロ
ーチです。当部では、平成21年より、本理論を医療に適応する「レジリエント・ヘルスケア」に国内外
の専門家とともに取り組み、本院の実践に取り入れ、成果の発信を継続しています。
 特に注目を頂いているのは「組織や職種の境界を超えた協働のメカニズムの解明」です。有限
なリソースしか持ち合わせていないユニットやシステム(チーム、組織、社会等)が、どのように適応
キャパシティをしなやかに拡張し、パフォーマンスの低下や重大事故を発生させることなく、日々の業
務のオペレーションを無事に遂行しているのかを言語化することは、近年、歴史的な擾乱(COVID-
19 パンデミックや医師の労働時間規制)を経験した、我が国の医療者一人ひとりに、喫緊の課題
として受け止められています。日常業務における様々な想定外の変化に対するシステムのレジリエン
ス発揮のメカニズムを、境界を超えた協働の観点から、リアルワールドのデータを用いて明らかにす
ると同時に、このようなシステム間の相互作用に関する暗黙知を社会実装し、次世代に引き継ぐた
めに、多くの皆様との連携を必要としています。
 つきましては、この機会にぜひご参加いただきたく、ご案内申し上げる次第です。また、貴施設で
病院管理や医療安全を担当されている皆様へご紹介賜れれば幸甚に存じます。





 プログラム(PDF)[1.8MB]はこちら



 ポスター(PDF)[3.6MB]はこちら
 基調講演資料はこちら