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DACS
 診療記録文書統合管理システム(Document Archiving and Communication System:DACS)は、我々が提唱したコンセプトで、診療情報をデータ単位ではなく文書(Document)単位で管理する診療記録の保存システムです。さまざまな診療情報を文書単位で管理することで、診療記録の電子保存に関する要件(真正性・見読性・保存性の担保)を満たし、長期的に診療記録を見読性を確保して保存します。電子カルテで作成される全ての文書を統合的に管理し、文書を時系列に文書種ごとに閲覧する事が可能です。また、簡単な操作で指定した期間の全ての診療録情報がある指定した順番で紙に出力する機能を持っています。

DACSとは
 大阪大学医学部付属病院は、2010年1月にDACSを導入し、2010年4月からペーパーレス電子カルテ運用を行っています。患者様が書いた記録や他院で書かれた記録、患者様の記録やサインが必要な問診票や同意書については、スキャナー取り込みで電子化しています。また、ファイルメーカー等でデータを管理し、報告書を診療記録としてプリント出力するもの、PC上で稼働する検査装置で検査結果をプリント出力するものなどは、仮想プリンターの技術で電子化しています。仮想プリンターとは、通常のプリンターで印刷するようにプリント出力指示をすると、患者ID、日付、文書種コード等の文書属性情報の登録画面が表示され、印刷イメージが直接電子カルテシステムに登録されるものです。

 阪大病院では、病院情報システムを構成する14社42システムで発生したデータをPDF等のドキュメント形式でDACSに登録しています。文書は(1)同意書・説明書(2)初診・経過記録(3)サマリ(4)検査(5)手術・処置(6)看護記録(7)チーム医療・コメディカル(8)入退院管理等(9)紹介状(10)指示・チェックリスト(11)その他と11の大項目に分類し、さらに中・小分類として詳細な文書種コードを付与して登録しています。文書種は 2,000種類以上であり、外来診察日には一日 8,000〜10,000文書が登録され、このうち約 1,500文書が紙媒体をスキャン登録した文書です。

DACSの構成
 DACSの基本構成は、文書 Generator, Deliverer, Archiver, Viewer です。文書を生成するシステムを Generator と呼び、生成された文書は全て Deliverer に送られます。 Deliverer は、Archiver に文書を登録すると共に、文書内のデータをデータウェアハウスに分析用のデータとして送信する事もできます。電子カルテシステムの一般の端末は Viewer によって Archiver に保管されている文書情報を閲覧することができます。

 Viewerには、患者毎に閲覧できる Medical Record Viewerと、患者に関係なく文書種毎に閲覧できる Document Resister Viewerがあります。Medical Record Viewerには時系列で全体を表示して、ある指定した期間の詳細を見せる Matrix Viewと、目的の文書を探したり最新レポートなどの分類で閲覧するための Tree Viewがあります。これらから目的の文書とそれに関連する文書を同時に閲覧できる Focus Viewを起動させることが可能であり、これらの Viewerで病歴情報の閲覧が支援されます。

阪大での利用状況
 DACSの導入により、患者の診療履歴が俯瞰して迅速に確認できるようになりました。また、DACSは PDFや DocuWorksなど汎用性のある形式で文書を保存しているため、データを蓄積しているシステムのベンダーが変わったとしても過去のデータを閲覧できることが保証されます。その他にも、電子カルテシステムで管理している診療録情報を証拠保全等のために開示請求があった場合は、予め決めたルールで出力順を表す番号をファイル名につけて全ファイルを出力し、ファイル名の並びの順に出力する方法で、診療情報を整理された順番でプリント出力することができます。

 阪大病院では、電子カルテへのログインの内 11.5%が DACS viewerにもログインしています。また一日平均外来患者数が約 2,500人、入院患者数が約 900人の本院において一日当たり平均 8,649文書が DACSで閲覧されており、本院では診療記録の閲覧システムとして DACSが定着していることがわかっています。



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