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臨床意思決定支援システム / clinical decision support systems (CDSS)
 医学会では、多くの新しい医学知識が生み出されています。しかし、これらの知識は、医療現場に適用されて初めて意味を持ちます。人材がそろった都会の病院の医師は、学会等に参加して、こうした知識を吸収し、自らも新しい知識を提供しています。一方、地方の医師不足に悩む病院の医師は、新しい知識を学ぶ時間的余裕すらないと聞きます。また、世界に目を向ければ、最新の医学知識の恩恵を受けている人は、世界人口のごくわずかです。

 医学知識は、生み出すだけでは十分ではなく、これを医療の最前線に届けて、必要な場面に適用できる状況を作りだして初めて人類に貢献したことになります。この研究課題に対しても、医療情報学は大いに貢献できるはずです。

  情報通信技術を使えば次のようなことが可能になると考えています。患者さんの症状や観察したことを記録すると、どのような病態が考えられるのか、どのような検査を実施すれば良いのか等の情報が提示されます。また、検査結果が得られれば、病態をどのように判断するべきか、どのような治療を選択するべきか等の情報が提示されます。薬を処方した場合には、それが適切でない場合には警告されます。画像診断においても、気になる症例に類似する画像を探し出し、その最終診断を知ることにより診断のヒントを得ることができます。

 つまり、診療に当たっている患者さんに関わる最新の医学知識がon-the-job training方式で提示されるのです。これにより医師は、自信を持って診療を進めることができ、また、診療をしながら最新の医学知識を学習することができます。もちろん、医療現場に居ながらにして学会を聴講できたり、ネットワーク上で症例検討会に参加したりするなども可能です。 こうしたことを実現するためには、どのようなことをすれば良いのでしょうか。

 まず、医学知識の記録方法、診療情報の記録方法について、コンピュータ処理を前提とした方法に改める必要があります。また、扱う言葉について、コンピュータ処理ができるような基盤を整える必要があります。これらは技術的にはそれほど難しいことではありません。ただし、医療で扱われる言葉、医学知識の量は膨大ですので、これを統一的な方法で整備していくためには、多くの人達の理解、協力が不可欠です。その体制作りに大きなパワーがいります。医療情報学の研究者が先導役となって、まず、その方法を医学会に対して提示していくことから始める必要があります。


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