病院長挨拶

質の高い医療の推進と豊かな未来社会の実現に向けて

大阪大学医学部附属病院 病院長 竹原 徹郎
大阪大学医学部附属病院
病院長 竹原 徹郎

大阪大学医学部附属病院は「良質な医療を提供すると共に、医療人の育成と医学の発展に貢献する」という理念を掲げています。職員一人一人が胸ポケットに収めている大切な心得です。

「良質な医療」とは何でしょうか?阪大病院では、年間2万人以上の患者さんが紹介受診され、入院加療を受けられています。大阪府下・阪神間はもとより、日本全国から多くの患者さんがいらっしゃいます。そのような皆さんが求められているものは、大学病院ならではの高度な医療や難しい疾患に対する最先端の治療です。阪大病院では、がん診療、循環器診療をはじめ、臓器移植、再生治療にいたるまで、幅広い領域で高度な医療が行われています。まさに、疾患に対する"最後の砦"としての役割を果たしています。しかし、質の高い医療というのは、単に高度で最先端の医療を指すだけではありません。医療は、多かれ少なかれ患者さんのからだに侵襲を加えることになります。何よりも優先されるのは患者さんの安全です。本院では、高度な医療を安全に行うために、チーム医療や多職種連携を通して、様々な取り組みを行っています。このような取り組みは国内でも高い評価を受けており、阪大病院は医療安全の分野でも全国屈指の存在として、指導的な役割を担っています。良質な医療を実施するためには、高度な医療とともに安全な医療が必要です。本院では、高度で安全な医療を通して、患者さんに安心と満足を提供することを目指して日々の診療を行っています。

"いまここにある現実の医療"をこのように着実に実施していくと共に、大阪大学に求められているもう一つの重要な使命が、未来の社会に役立つ医療を開発し、将来活躍する優れた医療人を育成することです。本院は、2015年に医療法上に位置づけられる「臨床研究中核病院」として、全国で初めての承認を受けました。将来の医療に役立つ新たなエビデンスの創出には、質の高い臨床研究が不可欠ですが、それを実施する牽引役としての役割を担っています。2018年には「がんゲノム医療中核拠点病院」に指定され、がんの個別化医療に取り組んでいます。さらに、未来医療開発部では再生治療をはじめとした先端的な医療開発に取り組み、AI医療センターでは内閣府の主導する「AIホスピタル」事業を推進しています。新しい医療は未来社会を豊かにし、AI(人工知能)を搭載した病院は快適な医療を実現するでしょう。そして、そのような未来を切り開いていくためには、人材育成が欠かせません。大阪大学では、将来に渡って活躍する医療人-医師はもとより、看護師、薬剤師、検査技師、放射線技師など、さまざまな医療職-の育成を行っています。

最後に、本院の再開発事業について触れさせていただきます。阪大病院は、1993年に、中之島から現在の吹田の地に移転してきました。早いもので、それから30年近くが経とうとしており、ところどころに老朽化や狭隘化が目立つようになってきました。そのようなことから、現在、本院では再開発事業が進んでいます。この事業の中核は、現在の外来棟の北側に「統合診療棟」とよばれる地下2階、地上8階の建物を新たに建築し、現在の病棟との間は渡り廊下で繋ぐというものです。新しい統合診療棟は、外来機能だけではなく、手術室やICU、内視鏡センター、放射線診断/治療、臨床検査、患者包括サポートセンター、総合周産期母子医療センター、アイセンター、未来医療開発部などが入り、病院の高度な診療機能を担うことになります。再開発のコンセプトは、"Futurability待ち遠しくなる未来へ。"です。2025年の春からの稼働を目指して、工事が急ピッチで進んでいます。ご来院いただく方々には、できるだけご不便をおかけしないように努めてまいりますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

■本院の歴代病院長はこちらをご覧ください。⇒阪大病院・歴代病院長.pdf