対象疾患説明

Conditions we treat

腹部の疾患
先天性小腸閉鎖症
(Intestinal atresia)

先天性小腸閉鎖症とは

小腸閉鎖症とは小腸の一部が途切れて腸管内容物が通過せず口側の小腸が拡張する病態で、生後に手術が必要です。

小腸閉鎖症には、小腸の上半分(空腸)に閉鎖を伴う空腸閉鎖症と小腸の下半分(回腸)に閉鎖を伴う回腸閉鎖症があります。約50%の小腸閉鎖症が胎児期に診断され、小腸上部の閉鎖症(空腸閉鎖)は小腸下部の閉鎖症(回腸閉鎖)より胎児診断率が高いです。
他の奇形の合併率は低いですが(10%弱)、嚢胞性線維症、ヒルシュスプルング病、腸回転異常などが合併する場合があります。

小腸閉鎖症の種類・重症度

小腸閉鎖の形状により5つに分類されます。

Type I(膜様型):小腸の外見は連続しているが腸管内腔は粘膜の膜で閉塞しているタイプ。
Type II(索状型):腸管が断裂して分離しているが、腸管膜は欠損なく正常であり、腸管―腸管間は線維組織でつながっているタイプ。
Type IIIa(離断型):腸管が断裂して分離しており、同部位の腸管膜は欠損しているタイプ。
Type IIIb(Apple peel型):アップルピール型と呼ばれるタイプ。腸管が断裂して分離しており、肛門側の小腸はコイル状で短縮しており、同部位の腸管膜は欠損しているタイプ。
Type IV(多発型):腸管が複数に分かれて断裂・分離しているタイプ。

原因

小腸閉鎖症II-IV型は、妊娠中に腸管膜血流が低下し腸管が虚血になることが原因です。
小腸閉鎖症I型は、十二指腸閉鎖症と同じく妊娠8-10週頃のリカナリゼーションと呼ばれる小腸の管腔内細胞の脱落が生じないことが原因です。

発生頻度

1/5000人の割合で生じます。

胎児期の超音波所見

通常より高輝度の拡張した小腸(15㎜以上)を認めます。小腸上部の閉鎖症(空腸閉鎖)だと拡張した胃や羊水過多を認めることがあります。
又、腹水、腹腔内嚢胞、腹腔内石灰化を認めた場合、妊娠中の腸管穿孔や壊死腸管を伴う複雑性小腸閉鎖症を疑います。

胎児期の症状

通常は無症状で経過します。
妊娠中に腸管穿孔や胎便性腹膜炎を生じた場合は子宮内胎児発育遅延などを認めることがあります。

胎児治療

現時点で十二指腸閉鎖症に対する胎児治療はありません。
稀に羊水過多を生じて問題になる場合は、穿刺による羊水除去を行う事があります。

分娩時期・方法

通常、小腸閉鎖症により分娩方法や分娩時期が変更になることはありません。
しかし、子宮内胎児発育遅延を認めた場合分娩時期を早めることがあります。

生後の症状・治療

小腸閉鎖症は、生後経鼻胃管を挿入し腸管内容液を外にドレナージして、誤嚥性肺炎にならないようにケアを行います。
全身状態が安定した生後1-3日頃に手術(小腸―小腸吻合)を行います。
I型、II型小腸閉鎖症では、NICU退院後は良好な成長発達が期待されます。
IIIb型(Apple peel型)やIV型小腸閉鎖症は、短腸症と呼ばれる残っている小腸が短い状態となり、経腸栄養に加えて経静脈栄養を長期に行う事があります。
腸管穿孔や壊死腸管を伴う複雑性小腸閉鎖症の場合には、腸瘻造設、大量小腸切除など複数回の手術や長期の入院を必要とすることがあります。