対象疾患説明
Conditions we treat胸部の疾患
腹部の疾患
双胎の疾患
泌尿生殖の疾患
染色体の疾患
腹部の疾患
腹壁破裂
(Gastroschisis)
腹壁破裂とは
腹壁破裂とは、お腹の壁(前腹壁)に孔があいていて、お腹の中の臓器が体外に脱出している病態です。
腹壁破裂の孔は臍帯の右側に生じ、孔のサイズは様々です。
欠損孔から脱出する臓器は、主に小腸ですが、結腸、胃、肝臓、膀胱、卵巣などがみられることもあります。
臍帯ヘルニアと異なり腹壁破裂では脱出臓器は膜につつまれていないので、脱出している腸は羊水によって炎症を受けます。
脱出腸管が拡張してない場合を単純性腹壁破裂、脱出腸管が拡張している場合を複雑性腹壁破裂と呼びます。
腹壁破裂は合併奇形を伴わないことが多いですが、複雑性腹壁破裂では腸閉鎖、子宮内腸捻転、慢性偽性腸閉塞を合併していることがあります。
原因
腹壁が形成される時の血流障害が原因と言われています。
若い母親や母親に喫煙歴があるとリスクが高くなると言われています。
発生頻度
1/2000人の割合で生じます。
胎児期の超音波所見
妊娠12週以降に超音波検査で見つかります。
臍帯の右側から膜につつまれてない腸管などが体外に脱出していることで診断します。
又、母体の血液のAFP値が高値で見つかることもあります。
胎児期の症状
通常は無症状で経過しますが、成長発達が遅かったり、早産になったり、子宮内死亡になることがあるので、頻回のモニタリングが必要です。
妊娠中子宮内腸捻転が生じた場合、児に異常を認めることがあります。
胎児治療
現時点で腹壁破裂に対する胎児治療はありません。
分娩時期・方法
妊娠38週頃の分娩を目指しますが、妊娠36-37週頃の分娩を推奨することもあります。
可能であれば経腟分娩を行いますが、児の腸管を保護する目的で帝王切開を行う事もあります。
生後の症状・治療
生後、脱出した臓器を温かく湿ったガーゼで保護しながら、分娩室からNICUに移動し、分娩週数に合わせた新生児の循環・呼吸のサポートを行います。又、経鼻胃管を挿入し胃液をドレナージして腸管内の減圧を行います。腹壁を閉鎖し腸蠕動が回復するまで、中心静脈栄養を行います。
脱出臓器が少ない場合は、一期的に腹壁を閉鎖します(Primary closure)。
方法としては、生後すぐ脱出臓器を腹腔内に戻して、臍帯で欠損孔を覆って皮膚保護剤で固定し1週間程度で欠損孔が閉鎖されるのを期待する場合(Primary suture-less closure)と、手術で腹壁を閉鎖する場合(Primary surgical closure)があります。
脱出臓器が多く腹腔内が小さい場合や腸管が肥厚している場合は、二期的に腹壁を閉鎖します(Staged closure)。
その場合は、生後すぐ脱出臓器をサイロと呼ばれるプラスティックの袋にいれて保護します。連日サイロを小さくしながら脱出臓器を腹腔内に押し込み、脱出臓器が皮膚レベルまで腹腔内に入ったら手術で腹壁を閉鎖します。
脱出臓器に腸閉鎖や腸捻転が合併していた場合は、腹壁形成術に加えて、腸切除・腸吻合や腸瘻増設術を行います。又、腸管が長い範囲で壊死している場合は短腸症候群となり、長期間の中心静脈栄養が必要となることがあります。
又、腹壁破裂に合併して停留精巣を認めることがあり、6か月までに改善しない場合は精巣固定術を行います。