対象疾患説明

Conditions we treat

頭部の疾患
脳梁欠損症

原因

脳梁欠損とは、脳梁の完全欠損もしくは部分欠損を呈する疾患の総称です。
原因は様々で、遺伝性のない単独の脳梁欠損と遺伝的な要因を伴う場合があります。後者の場合、症候群(Walker-Warburg症候群、Fryns症候群、Aicardi症候群、Rubinstein-Taybi症候群、透明中隔視神経形成異常など)が原因の場合と、染色体異常が原因の場合があります。
脳梁欠損では、他の中枢神経系病変(大脳半球間裂嚢胞、頭蓋内脂肪腫、小頭症、神経管閉鎖不全症、Dandy-Walker症候群など)、筋骨格系病変(33.5%)、心血管系病変(27.6%)、腎泌尿器疾患や消化管疾患を伴うことがあり精査が必要です。
脳梁は、吻側、膝、体部、膨大部で構成されており、大脳半球の分割が終了した後に、脳梁原基が形成されます。胎生11~12週頃に最初の交連線維が脳梁原基を通過し始め、13週頃に交連線維の集合体が形成されます。脳梁の形成は、通常、膝部から始まり、その後体部、膨大部の順に形成され、最後に膝部より前方の吻側の形成が行われます。
脳梁原基が全く形成されない場合は完全欠損となり、部分的に形成された場合は膝部や体部の前方が形成され膨大部や吻側が形成されないことが多いです。

発生頻度

1.8/10000人の割合で生じます。脳形成異常の中では最も多い疾患です。
染色体異常の合併は、全欠損症で4.81%、部分欠損で7.45%に認めます。

胎児期の超音波所見

通常、脳梁形成は妊娠10週台半ばから生じ、妊娠18~20週で脳梁の全体像が描出できるため、診断できるのは妊娠20週以降となります。
超音波検査で、赤ちゃんの頭をあらゆる角度で観察します。頭蓋内に、透明中隔という部位を認めないことや、側脳室という部位が拡大していることが特徴的です。
また側脳室は、頭蓋横断面では後角が涙滴状に、前額断面では前角が牛角状になり、通常とは異なる形になることも特徴です。
その他、脳梁部に脂肪腫を合併する場合があります。
又、大脳半球間裂嚢胞を合併する場合や嚢胞が大きい場合は脳梁欠損の診断が難しい場合があります。より詳細に観察するために、胎児MRI検査を行うこともあります。

分娩時期・方法

水頭症などの合併がなく頭囲拡大を認めない症例では、通常、満期で経膣分娩となります。

生後の症状・治療

他の奇形を合併してない脳梁欠損の場合は、症状がなく、神経学的検査でも異常所見を認めない場合が多いです。
他の奇形を合併している脳梁欠損の場合でも、運動発達は正常で80%以上の患者さんで精神発達も正常だと言われていますが、一部の奇形を合併している場合、てんかん、知的障害、発達障害などを生じる場合があります。
通常、脳梁欠損に対する手術治療は行いませんが、大きな大脳半球間裂嚢胞を呈する場合は、嚢胞壁を開窓したり、嚢胞シャント術を行う場合があります。

参考文献

  1. 山崎麻美. 脳梁欠損症. In 小児脳神経外科学(第1版) 監修 横田晃、編集 山崎麻美、坂本博昭 2009年(金芳堂)
  2. 胎児期水頭症ガイドライン編集委員会編:胎児期水頭症―診断と治療ガイドライン. 2005年(金芳堂)
  3. 坂本博昭. 先天奇形. In脳神経外科学(第13版)原著 太田富雄、編集 松谷雅生、野崎和彦 2021年(金芳堂)
  4. Glass HC et al. Agenesis of the corpus callosum in California 1983-2003: a population-based study. Am J Med Genet. 2008年
  5. D’Antonio F et al. Outcomes Associated with Isolated Agenesis of the Corpus Callosum: A Meta-analysis. Pediatrics. 2016年
  6. Pooh RK et al. Fetal neurology. 2009年 (Jaypee Brothers Medical)