対象疾患説明

Conditions we treat

腹部の疾患
臍帯ヘルニア
(Omphalocele)

臍帯ヘルニアとは

臍帯ヘルニアとは、お腹の壁(腹壁)の中央が欠損していて、お腹の中の臓器が(腸、胃、肝臓など)が臍帯から続くヘルニア嚢(腹膜、Wharton‘s jelly、羊膜)と呼ばれる膜に覆われて体外に突出している病態です。

腹壁破裂と異なり、臍帯ヘルニアでは脱出臓器がヘルニア嚢に覆われているため損傷を受けることはありませんが、10-20%にヘルニア嚢の破裂を認めます。
臍帯ヘルニアの多くは臍周囲に見られます(臍部型)が、胸骨下部まで欠損していてカントレル症候群(Cantrell syndrome)と呼ばれるタイプや、骨盤方向まで欠損している総排泄腔外反(Cloacal exstrophy)と呼ばれるタイプも存在します。
臍帯ヘルニアのサイズは様々で、ヘルニア嚢が小さいタイプ(臍帯内ヘルニア)からヘルニア嚢直径が5㎝以上で肝臓も脱出しているタイプ(巨大臍帯ヘルニア)もあります。
臍帯ヘルニアは50-70%に合併奇形(染色体異常、Beckwith-Wiedemann syndrome、心奇形など)を伴うので、精査を行います。

原因

臍帯輪を形成する際の外側ヒダの癒合不全と生理的に脱出した中腸の腹腔内への還納不全が原因と言われています。
又、カントレル症候群(Cantrell syndrome)では頭側ヒダの癒合不全が、総排泄腔外反(Cloacal exstrophy)では尾側ヒダの癒合不全が原因と言われています。

発生頻度

2.4-5/10000人の割合で生じます。

胎児期の超音波所見

妊娠10-12週以降に超音波検査で見つかります。
腹腔内臓器が膜に覆われて腹腔外に突出していることで診断します。
その他、臍帯ヘルニアのサイズ、肝臓脱出の有無、合併奇形の有無なども評価します。
巨大臍帯ヘルニアでは肺低形成の有無も評価します。

胎児期の症状

合併奇形のない臍帯ヘルニアは通常無症状で経過します。
しかし、成長発達障害、早産、後期子宮内死亡などになることがあるのでモニタリングが必要です。

胎児治療

現時点で臍帯ヘルニアに対する胎児治療はありません。

分娩時期・方法

妊娠38-40週の分娩を目指しますが、ヘルニア嚢が破裂した場合は緊急での分娩を行います。
臍帯ヘルニアが小さい場合は経腟分娩を行いますが、大きい場合は帝王切開を行う場合があります。

生後の症状・治療

生後、ヘルニア嚢を温かく湿ったガーゼで保護しながら、分娩室からNICUに移動し、分娩週数や合併奇形に応じた循環・呼吸のケアを行います。又、経鼻胃管を挿入し胃液をドレナージして腸管内の減圧を行います。腹壁を閉鎖し腸蠕動が回復するまで、中心静脈栄養を行います。
腹壁閉鎖の方法に関しては、臍帯ヘルニアサイズ、合併奇形の有無・重症度により異なります。一期的に腹壁を閉鎖する場合(Primary closure)、全身状態が落ち着いてから一期的に腹壁を閉鎖する場合(Delayed primary closure)、サイロと呼ばれるプラスティックの袋や人工布に脱出臓器を入れて徐々に小さくしながら二回目の手術で腹壁を閉鎖する場合(Staged closure)などがあります。
又、巨大臍帯ヘルニアでは、手術回数を減らすために数か月かけてヘルニア嚢を痂皮化させ後に腹壁を閉鎖する方法(Delayed closure using topical treatment)を行う事もあります。肺低形成や肺高血圧を認める臍帯ヘルニアでは、長期に渡る呼吸サポートを必要とします。Beckwith-Wiedemann syndromeを伴う臍帯ヘルニアでは呼吸機能や嚥下機能のフォローが必要です。