対象疾患説明
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腹部の疾患
双胎の疾患
泌尿生殖の疾患
染色体の疾患
双胎の疾患
胎児発育不全を伴う一絨毛膜双胎
(sIUGR: selective intrauterine growth restriction)
胎児発育不全を伴う一絨毛膜双胎とは
双子が1つだけの胎盤しかもたない場合(一絨毛膜性双胎)、胎盤表面に双子をつなぐ吻合血管が存在します。胎盤の吻合血管を介する血流の問題に加えて、双子それぞれの胎盤占有面積がアンバランスになることで、双子のうち一児のみ発育が遅れ、妊娠週数に相当する胎児の体重に満たない状態になります。
sIUGRの問題点
胎児発育不全の問題、胎盤の吻合血管の起因する周産期脳障害のリスク、さらには一児が胎内死亡となった時に生存児から死亡した児への急激な血液の移行が起こるために生存児の貧血や循環不全により胎内死亡や神経学的後遺症の危険があります。
発生頻度
一絨毛膜双胎の10~20%に認められます。
胎児期の超音波所見
胎児超音波検査で、小さい方の胎児の推定体重が-1.5SD以下(*)もしくは両胎児の推定体重差が25%以上ある場合に診断します。さらに臍帯の血流と羊水量を計測し重症度を分類します。
*:「推定体重が-1.5SD以下」を言い換えると「同じ週数の胎児を体重の小さい順に並べたとき、100人中で7番目以下」ということになります。
sIUGRの種類
小さい方の胎児の臍帯動脈の血流で評価します
TypeⅠ:異常を認めない(予後良好群)
TypeⅡ:拡張期血流が常に途絶、もしくは逆流する
TypeⅢ:拡張期血流が周期的に途絶逆流を繰り返す
胎児治療
臍帯の血流に異常の見られないもの(TypeⅠ)では、慎重に経過を見ます。
一方、TypeⅡやTypeⅢについては、下記の治療を考慮します。治療の必要性が考えられる場合、治療実施施設(主に大阪母子医療センター)に紹介させていただきます。
①胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術
妊娠26週未満のsIUGRでは胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP: fetoscopic laser photocoagulation for communicating vessels)の適応を考慮します。最終的に治療を実施するかどうかについては、紹介先の施設で再度評価の上、判断します。
②② 胎児治療の成績
日本におけるFLP症例52例の検討では、全例で母体の重篤な周術期合併症を認めませんでした。新生児の生存率は小さい方の胎児の44%、大きい方の胎児の94%で、治療によって予後が改善しています参考文献1。
分娩時期・方法
分娩管理に関する指針は確立されていませんが、胎児の発育、羊水量、臍帯の血流などに注意しながら、胎児心拍モニタリングを組み合わせて慎重に管理します。
生後の症状・治療
児の体重や未熟性、貧血や循環不全の程度に応じた治療を行います。
参考文献
- Ishii K, et al. Survival Rate without Brain Abnormalities on Postnatal Ultrasonography among Monochorionic Twins after Fetoscopic Laser Photocoagulation for Selective Intrauterine Growth Restriction with Concomitant Oligohydramnios. Fetal Diagn Ther. 2019;45(1):21-27