対象疾患説明
Conditions we treat胸部の疾患
腹部の疾患
双胎の疾患
泌尿生殖の疾患
染色体の疾患
胸部の疾患
胎児胸水
(Fetal hydrothorax・Fetal pleural effusion)
胎児胸水とは
胎児胸水とは、胎児の胸腔内に液体が溜まる状態を指します。
胸水が大量に貯留すると、肺や心臓が圧排されて肺低形成や胎児水腫(胸水、腹水、心嚢液、皮下浮腫の内2つ以上を満たす病態)を呈することがあります。
胎児胸水の種類と原因
リンパ液の交通障害が原因で胸水が溜まる場合(=一次性胎児胸水)と、染色体異常、感染症、心臓疾患、肺疾患など他の原因で生じる場合(=二次性胎児胸水)に分類されます。
発生頻度
一次性胎児胸水は1/12000、二次性胎児胸水は1/1500の確率で生じます。
胎児期の診断
胎児胸水は、主に超音波検査で診断されます。それ以外に、胎児心臓エコー検査、胎児MRI検査、羊水検査を行う場合もあります。
超音波検査では下図のように胎児の胸腔内に低輝度の液体貯留や圧排された高輝度の肺実質や心臓を認めます。胸水貯留以外にも、胎児水腫の所見(腹水貯留、心嚢液貯留、皮下浮腫)などを認めることがあります。
胎児期の症状
胎児胸水の多くは無症状で経過し、一部に胎児期に消失する場合もあります。
一方で、大量に胸水が貯留する場合には、正常肺組織が圧排され肺低形成や、心臓が圧排され血液が心臓に戻りにくくなり胎児水腫(胸水、腹水、心嚢液、皮下浮腫の内2つ以上を満たす病態)を生じることがあります。
胎児治療
胎児水腫がある場合や心臓が圧排の程度が大きい場合に、胎児治療を行います。
①胸水穿刺ドレナージ
胎児超音波検査を行いながら、お母さんの腹壁から細い針を胎児胸腔内に穿刺し、胸水を除去します。それによって、赤ちゃんの心臓や肺への圧迫が解除されます。除去した胸水で、胸水の原因も調べることができます。また、感染や染色体の検査を行うこともあります。
中には、胸水穿刺をしてから、24〜72時間以内に再び胸水が貯留してくる場合があります。その場合には、次に述べるように胸腔羊水腔シャント術を行うことを検討します。
②胸腔羊水腔シャント術
胎児超音波検査を行いながら、赤ちゃんに麻酔を行い、お母さんの腹壁から細い針を胎児胸腔内に穿刺し、胸腔と羊水腔を結ぶシャントチューブを挿入し、胸水を羊水腔内に持続的に排出させます。シャントチューブを入れる手術を行い胸水貯留が改善できた場合は、生存率は約90%まで改善します。
分娩時期・方法
胸水が少量の場合は、妊娠満期にお母さんの状態に合った分娩方法(主には自然経腟分娩)で分娩を行います。
胸水が大量の場合、もしくは重度の合併奇形がある場合は、生まれた後の治療がスムーズに行えるように、計画的な誘発分娩や帝王切開術を行う事があります。
胎児水腫を呈した場合は、早期に分娩になることがあります。
生後の症状・治療
生まれた後の呼吸状態に合わせて治療を行います。
呼吸困難があれば、酸素投与、人工呼吸器管理を行います。
胸水が多く、呼吸や循環の妨げになっている場合は、胸水を減らすために胸水穿刺や胸腔ドレーン挿入術を行います。