対象疾患説明
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泌尿生殖の疾患
染色体の疾患
胸部の疾患
先天性食道閉鎖症
(Esophageal Atresia、Tracheoesophageal Fistula)
先天性食道閉鎖症とは
食道とは、咽頭と胃をつなぐ管状の臓器で、肺につながる気管の背側に存在します。。
食道閉鎖症とは、食道の一部が途切れて食道が断裂しており、食道断端が盲端になっているもしくは気管と繋がっている病態で、唾液・経口摂取物が通過しない、唾液や胃液が気管内に入り込むなどの問題を生じるので、生後に手術が必要です。
約60%に他の合併奇形(脊椎、直腸肛門、心臓、気管、食道、腎臓、四肢など)や染色体異常(18トリソミー、21トリソミー)を認めることがあり、生後に精査を行います。
先天性食道閉鎖症の種類・重症度
食道閉鎖の形状により5つに分類されます。
- A:上部食道、下部食道とも盲端になって分かれているタイプ。二番目に多く10%に認めます。
- B:上部食道は気管につながっているが(気管食道瘻)、下部食道は盲端になっているタイプ。
- C:上部食道は盲端になっているが、下部食道は気管につながっている(気管食道瘻)タイプ。一番多く85%に認めます。
- D:上部食道、下部食道とも気管につながっているタイプ。
- E:食道は分離してないが、気管食道瘻で食道と気管がつながっていてH型を呈しているタイプ。
原因
前腸から肺芽ができその後各々が分離し気管と食道が形成されます。気管と食道の分離がうまく行かないと食道閉鎖症が生じます。
発生頻度
1/3500人の割合で生じます。
胎児期の超音波所見
胃が小さく妊娠24週以降に羊水過多を認めた場合、食道閉鎖症を疑いますが、診断率は44-63%程度です。又、拡張した上部食道を認める場合も食道閉鎖症を疑います。
胎児期の症状
通常は無症状で経過します。
胎児治療
現時点で食道閉鎖症に対する胎児治療はありません。
食道閉鎖症による羊水過多が問題となる場合には穿刺による羊水除去を行う事があります。
分娩時期・方法
通常、食道閉鎖症により分娩方法や分娩時期が変更になることはありません。
しかし、33-41%の症例で羊水過多により早産で生まれてくることがあり、平均妊娠36.5週で分娩となります。
生後の症状・治療
生後、経鼻胃管を挿入し上部食道内で丸まって胃まで入らない(コイルアップ)場合、食道閉鎖症と診断されます。唾液が口腔内にたまって誤嚥性肺炎にならないように口腔内吸引などのケアや経静脈栄養を行います。
C型食道閉鎖症の場合、全身状態が安定した生後早期に手術(食道―食道吻合、気管食道瘻結紮)を行います。
A型食道閉鎖症の場合、上部食道―下部食道間の距離が長いため新生児早期に根治術を行う事が難しいことが多いです。その為、新生児期に胃瘻造設術を行い、胃瘻から経腸栄養を行い成長を待って待機的に食道閉鎖根治術を行います。