対象疾患説明

Conditions we treat

その他の疾患
胎児貧血
(Fetal anemia)

胎児貧血とは

胎児貧血とは、胎児の血液内の赤血球数が通常よりも少ない病態を指します。

原因

血液型不適合妊娠・パルボウイルス感染・胎児母体間輸血症候群などがあります。

発生頻度

日本人における正確な頻度は不明ですが、2012年から2016年の間に胎児貧血による胎児臍帯血採血の報告が112例されています参考文献1

胎児期の超音波所見

胎児超音波検査にて胎児の脳血管(中大脳動脈)の血流速度を計測し胎児貧血を推定します参考文献2。胎児貧血が進行すると、胸腔内や腹腔内の液体貯留や、皮下が厚くなる所見を認めます。

胎児期の症状

貧血が軽度の場合は無症状で経過します。
貧血が重度の場合は、高拍出性心不全となり、胎児水腫(胸水、腹水、心嚢液、皮下浮腫の内2つ以上を満たす病態)を呈します。

胎児治療

貧血が重度の場合には胎児治療を行います。

①胎児輸血

母体の腹壁に局所麻酔を行い、胎児超音波下に臍帯や胎児肝臓の血管に細い針を刺し、胎児へ輸血を行います。又、胎児超音波下に胎児腹腔内へ直接穿刺する場合もあります。
胎児貧血は進行する場合が多く、妊娠中複数回の胎児輸血を要することがあります。
血液型不適合妊娠による貧血に対する胎児輸血後の胎児の生存率は97%です参考文献3

分娩時期・方法

妊娠中胎児水腫の有無や貧血の進行の程度を評価しながら、分娩時期を決めます。
妊娠36週以降に胎児貧血が疑われるときには胎児治療は行わず分娩となります。

生後の症状・治療

原因に合わせた治療を行うほか、重症であれば交換輸血などを行うこともあります。黄疸に対する治療が必要な場合もあります。

参考文献

  1. Sasahara J, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2019;45:1821-1827.
  2. Oepkes D, et.al. N Engl J Med. 2006;355:156-164.
  3. Zwiers C, et al. Am J Obstet Gynecol. 2018;219:291.e1-291.e9.