対象疾患説明

Conditions we treat

泌尿生殖の疾患
下部尿路閉塞
(Bladder Outlet Obstruction:BOO)

下部尿路閉塞とは

血液中の老廃物は腎臓でろ過され尿となり、尿路(尿管、膀胱、尿道)と言われる管を通って体外に排泄されます。
下部尿路とは膀胱から尿道を指し、下部尿路閉塞とは、尿道に狭窄部があるため膀胱内に尿が大量に溜まっている状態です。下部尿路閉塞が進行すると、上部尿路(腎臓・尿管)まで尿が逆流し水腎水尿管となり腎臓の機能が低下します。

下部尿路閉塞の種類

下部尿路閉塞の原因としては、後部尿道弁(Posterior urethral valves:PUV)、尿道閉鎖(Urethral atresia)、尿道狭窄(Meatal stenosis)が知られています。

原因

後部尿道弁は、尿道の発生において尿生殖洞内に精丘ヒダや尿生殖隔膜が遺残することが原因と考えられている。

発生頻度

1/8000人の割合で生じます。

胎児期の超音波所見

胎児の下腹部に拡張した膀胱、膀胱壁の肥厚、両側の腎盂尿管の拡張などを認めます。
後部尿道弁では後部尿道の拡張を示すキーホールサインを認めます。
腎機能が低下すると羊水過少、高輝度の腎実質なども見られます。

胎児期の症状

軽度の場合は無症状で経過します。
しかし、膀胱拡大や両側腎盂尿管拡張が進行すると、腎機能が悪化し羊水過少となり、肺が低形成となり子宮内胎児死亡に至ることがあります。

胎児治療

妊娠26週未満で、合併奇形がなく、腎機能が正常な場合、胎児治療を行います。

①膀胱-羊水腔シャント術

胎児超音波検査を行いながら、胎児に麻酔を行い、お母さんの腹壁から針を穿刺し、赤ちゃんの膀胱内と羊水腔を結ぶシャントチューブを挿入します。
膀胱羊水腔シャント術は、周産期生存率は改善させるものの、長期の腎機能・膀胱機能障害の改善には十分な効果がない可能性が言われています。

②胎児膀胱鏡下後部尿道弁切開術

お母さんに局所麻酔を行い、母体の腹壁から胎児鏡を胎児膀胱内に挿入し、尿道弁の切開を行います。
胎児膀胱鏡下後部尿道弁切開術は、腎機能予後が改善する可能性が言われており、本邦でも大阪母子医療センターで行っています。

分娩時期・方法

通常、下部尿路閉塞により分娩方法や分娩時期が変更になることはありません。

生後の症状・治療

肺低形成や電解質異常に対する全身管理と主に、経尿道的にチューブを挿入し排尿管理を行います。
検査を行い後部尿道弁であることが確認できたら、全身麻酔下に膀胱尿道鏡を行い、内視鏡的弁切開術を行います。
閉塞解除した後も、膀胱機能・腎機能障害に対して定期的なフォローが必要です。