対象疾患説明
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多嚢胞性異形成腎
(multicystic dysplastic kidney:MCDK)
多嚢胞性異形成腎とは
多嚢胞性異形成腎とは、先天性腎尿路異常のひとつの疾患です。腎臓が形づくられる胎児期に何らかの障害が生じて正常な構造がつくられずに大小様々な嚢胞が多数できてしまった腎臓を指します。
多発性嚢胞腎とは異なり、多嚢胞性異形成腎では腎臓が異形成であるため、尿をつくるなどの正常な腎機能を持ち合わせていません。
多嚢胞性異形成腎の種類・重症度
通常は片側の腎臓にのみ起こるため、機能する腎臓がひとつしかない状態(片腎)となります。対側の腎臓が正常に機能していれば腎不全に至ることはありません。
しかし、対側の腎臓に何らかの腎尿路異常を合併していることがあり、その中では膀胱尿管逆流が多いです。その場合は腎機能の低下が生じ、慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)となる可能性があるので、フォローが必要です。
又、腎臓の異形成が両側に生じた場合は、ポッター症候群と呼ばれ、羊水過少、肺低形成を来すため生命予後は極めて不良です。
原因
胎児期に腎臓が形づくられる過程で組織間の相互作用が大切ですが、その過程に関わる様々な因子や遺伝子の異常が関係していたり、尿路の閉塞が影響したりすると考えられています。
発生頻度
およそ4000人に1人。左側に多く、男児に多い傾向があります。
胎児期の超音波所見
多くの場合は腎嚢胞や水腎症として発見されます。多数の嚢胞が拡張した腎盂と区別がつきにくいことがあります。嚢胞のサイズが大小様々であることと隣り合う嚢胞は交通がなく隔壁となっていることが特徴です。
胎児期の症状
大きな嚢胞が複数ある場合は腹腔内を占拠してしまうことがあります。
胎児治療
現時点で多嚢胞性異形成腎に対する胎児治療はありません。
分娩時期・方法
通常片側の多嚢胞性異形成腎により分娩方法や分娩時期が変更になることはありません。
生後の症状・治療
嚢胞は時間経過とともに小さくなりやがて退縮します。
多くの場合(60%以上)10歳までにエコー検査で嚢胞がみえなくなります。対側の腎臓は代償性に成長していきますので、その経過をフォローしていくことになります。
定期的なエコー検査及び血液検査での腎機能評価により問題がなければ治療は必要ありません。
対側の腎臓にも腎尿路異常などの何らかの問題があり、腎機能が低下してきたり、高血圧を合併したりする場合は外科的治療を検討することがあります。