対象疾患説明
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染色体の疾患
染色体の疾患
18トリソミー(エドワーズ症候群)
18トリソミー(エドワーズ症候群)とは
46本あるヒトの染色体のうち、18番染色体の全部または一部分が3本ある疾患です。英国のJohn Hilton Edwards医師らがはじめて報告したのでEdwards(エドワーズ)症候群ということもあります。
原因
18番染色体の全部が3本ある標準型(トリソミー型)、一部分が別の染色体についている転座型、2本の正常細胞と3本のトリソミーの細胞の両方が混ざっているモザイク型などがありますが、ほとんどが標準型です。標準型は、卵子あるいは精子が成熟する過程で2本の染色体が1本ずつにうまく分かれず(染色体不分離)1本多くなることで起こります。この現象は母親の加齢とともに頻度が増えます。
発生頻度
約3,500~8,500人に1人の頻度で誕生し、女児が多い(男児:女児=1:3)と言われています。
妊娠初期の超音波検査
ご両親が希望した場合、妊娠11~13週に超音波検査で赤ちゃんの首の後ろの皮下部分(nuchal translucency: NT)を測定し、母親の年齢、妊娠週数も考慮して、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーなどの疾患の確率が高いかどうかを推定します。NT値以外にも、必要に応じて超音波検査で血流や骨の長さなど他の結果と組み合わせて検討します。診断するには、絨毛や羊水での染色体検査が必要となります。
胎児期の症状
胎児の推定体重が小さく(胎児発育不全)、胎動が弱い、羊水が多いまたは少ない、胎盤が小さい、へその緒の動脈が1本(一般的には2本)、小脳が小さい、心疾患、消化器疾患、手を握っていて指が重なる、かかとがまるい、足が曲がっているといった症状が見られることがあります。妊娠10週以降でおよそ85%の赤ちゃんが胎内で亡くなります。
分娩時期・方法
産婦人科医師だけでなく小児科医(新生児科医や小児循環器医師)、小児外科医や助産師、心理士などチームとなって、お子さんの症状について妊娠中に詳しく説明します。母の健康状態や羊水量、胎児の合併症や状態によって個別に話し合って、分娩時期や分娩方法について検討していくことになります。
生後の症状・治療
ほとんどのお子さんに先天性心疾患(心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存、大動脈狭窄、両大血管右室起始、ファロー四徴症など)や肺高血圧が見られ、ときに呼吸器系合併症(横隔膜弛緩症、上気道閉塞、無呼吸発作など)、消化器系合併症(食道閉鎖、鎖肛、胃食道逆流、横隔膜ヘルニアなど)、神経系合併症(けいれん、小脳形成不全、脊髄髄膜瘤、難聴など)、泌尿器系合併症(馬蹄腎、水腎症、鼠径ヘルニア、停留精巣など)、筋骨格系合併症(多指症、合指症、橈側欠損、関節拘縮、側弯症など)、眼科合併症(角膜混濁、屈折異常、白内障、緑内障、斜視など)、悪性腫瘍(Wilms腫瘍、肝芽腫)などの症状が見られることもあります。それぞれの症状に合わせて必要な検査や治療、経過観察を行っていきます。
成長や発達は、お子さんの合併症や栄養状態によってさまざまです。発達の遅れは重度ですが、お子さんのペースでゆっくりと着実に成長・発達していくので、個別の訓練や療育を通して発達を促していくことが大切です。
呼吸器や循環器系の重症の合併症のあるお子さんが多く、以前は1歳まで生きることが難しいと言われていました。最近積極的に治療を行うことで健康管理がうまくいくようになってきており、2016年の米国の報告では78%が1日、13%が1年間、12%が5年間、2019年の欧州の報告では58%が1週間、12%が1年間、7.7%が5年間生きることができていました。日本の調査では、2006年の報告で1年生存率は0~29%とさまざまですが、2018年に心臓の手術をしたお子さんの1年生存率が84%、3年生存率が53%であったと報告されています。これからも経過は変わっていくことが予想されます。
ご家族への支援
18トリソミー症候群のあるお子さんのご家族は、生まれる前からたくさんの説明を聞いて、生まれてからも合併症の治療などで、不安や焦りを感じることがあります。退院してご自宅で過ごすことを目標に、医療ソーシャルワーカーが中心となって、医療的なケアのサポート(かかりつけ医、連携医療施設、訪問看護、訪問リハビリテーション、保健師、療育施設などとの連携)、心理的なサポート(心理士との面談、家族会や他のご家族の紹介)、経済的なサポート(福祉制度利用など)といった準備をすすめていきます。
18トリソミーと13トリソミーのお子さんの親を対象とした北米のアンケート調査では、お子さんを幸せな存在と考え(99%)、その子どもの存在により親自身の人生が豊かになり(98%)、夫婦関係(68%)やきょうだい(82%)によい影響を与えていると回答していました。お子さんがご家族にとって大切な存在であると感じられるよう、支援していきたいと考えています。