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チームパフォーマンス(ノンテクニカルスキル、レジリエント・ヘルスケア)

1. 医療安全におけるノンテクニカルスキルの重要性

 ノンテクニカルスキルとは、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、状況認識、意思決定などを包含する総称であり、専門的な知識や技術であるテクニカルスキルとともに、チーム医療における安全や質の確保に必要なものです。当部では、『医療チームにおけるノンテクニカルスキル』に関するDVD及び冊子を作成しました。これは英国人で民間航空機のパイロットであるマーティン・ブロミリー氏とNHSが作成した英語のビデオ、および同氏が英国麻酔学会会報誌に投稿した論文を、関係者の許可を得て、日本語に訳したものです。 この中には、ブロミリー氏のご家族が経験した医療事故と、そこに見られるノンテクニカルスキル上の問題点が解説されています。また、医療系学生を含めた医療界におけるノンテクニカルスキルの教育・トレーニングの導入が提唱されています。

医療安全とノンテクニカルスキル(Just a Routine Operation)

 ブロミリー氏のビデオ及び論文で紹介されている事例の事故調査報告書
 http://www.chfg.org/resources/07_qrt04/Anonymous_Report_Verdict_and_Corrected_Timeline_Oct_07.pdf

2. ノンテクニカルスキルに関する教育手法の探求

 ノンテクニカルスキルに関する理解を深め、さらに具体的な教育方法を開発するために、平成22年度国公私立大学附属病院医療安全セミナー(大阪大学医学部附属病院主催、文部科学省後援)において、「医療安全における教育手法について」というセッションを設けました。4名の講師から医学生、研修医、医療従事者らに対するユニークな教育方法(シミュレーション、ケースメソッド、寺子屋、グループワーク)についてのご講演をいただきました。さらに、航空界のエキスパートをまじえて、ノンテクニカルスキル(特に、ブリーフィングとディブリーフィング)の実際や教育方法についてパネルディスカッションを行いました。

<座長>
 中島和江 (大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 部長)
 任 和子 (京都大学医学部附属病院病院長補佐 看護部長)

<パネリスト>
 小林宏之 (日本航空機操縦士協会副会長(前日本航空機長))
 中村京太 (横浜市立大学医学部救急医学講座 准教授)
 森本 剛 (京都大学大学院医学研究科医学教育推進センター 講師)
 中島 伸 (国立病院機構大阪医療センター脳神経外科 科長)
 米井昭智 (倉敷中央病院麻酔科 主任部長)
 高橋りょう子 (大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 副部長)
  
       ( ):セミナー開催時の所属

3. 医療におけるノンテクニカルスキルの実践とトレーニング

 平成23年度国公私立大学附属病院医療安全セミナー(大阪大学医学部附属病院主催、文部科学省後援)において、「医療におけるノンテクニカルスキルの実践とトレーニング」というセッションを設けました。3名の講師から診療現場で行っている「ブリーフィング(事前打ち合わせ)」「ディブリーフィング(振り返り)」「SBAR状況報告」についてご講演いただき、参加者とともにスピークアップ(声かけ)やリスニング(傾聴)、トレーニング等を含め意見交換を行いました。

<座長>
 中島和江  (大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 部長)
 任 和子  (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻臨床看護学講座 教授)

<パネリスト>
 上田裕一  (名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座心臓外科学 教授)
 庄子由美  (東北大学病院 副看護部長)
 高橋りょう子(大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 副部長)
  
       ( ):セミナー開催時の所属

4. 医療従事者の安全を支えるノンテクニカルスキル

 ノンテクニカルスキルとは何か、なぜ医療安全やチーム医療においてノンテクニカルスキルが重要なのか、国際的にどのような取り組みがなされ、どのような知見が得られているのか、現場のノンテクニカルスキルを向上する具体的な方法は何かなど、ノ ンテクニカルスキルに関する基本的な事項をまとめました。

5. 医療チームの安全を支えるノンテクニカルスキル
  ~スピークアップとリーダーシップ~

 平成24年度は、スピークアップとリーダーシップ・フォロワーシップを中心テーマとして取り上げました。個人の状況認識における認知能力の限界や意思決定におけるバイアスを克服し、チームとして最良のパフォーマンスを発揮するためには、医療チームのメンバーのコミュニケーションや相互支援が不可欠です。本冊子では、スピークアップとリーダーシップ・フォロワーシップの概念、具体的な方法、医療、航空、消防等における実践例について紹介しています。

第1 章 状況認識の限界と意思決定バイアス〜スピークアップとリーダーシップの必要性

第2 章 リーダーシップ・フォロワーシップの実践
 1. 第60 回日本職業・災害医学会学術大会
  「チーム医療に求められるノンテクニカルスキル」
  <座長>
  中島和江 (大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 部長)
  <演者>
  小林宏之 (日本航空機操縦士協会 副会長)
  土岐祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科学Ⅱ 教授)

 2. 平成24 年度国公私立大学附属病院医療安全セミナー
  「危機的状況におけるリーダーシップ」
  <座長>
  中島和江 (大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 部長)
  土岐祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科学Ⅱ 教授)
  <パネリスト>
  髙野甲子雄(公益財団法人原子力安全研究協会 放射線災害医療研究所
        副所長(前東京消防庁))
  中村京太(横浜市立大学医学部 救急医学講座  准教授)
  卯野木健(筑波大学附属病院 副看護部長)
  大森正樹(国家公務員共済組合連合
       シミュレーション・ラボセンター  ラボマネージャー・臨床工学技士)
  
       ( ):セミナー開催時の所属

6. 医療安全へのレジリエンスアプローチ【イントロダクション】

 平成25年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、安全の世界的大家である南デンマーク大学のエリック・ホルナゲル教授をお招きし、医療安全のパラダイムシフトになると考えられる「レジリエンス・エンジニアリング」について取り上げました。従来の安全が「失敗から学ぶ」ものであるのに対し、レジリエンス・エンジニアリングでは「成功から学ぶ」というアプローチをとり、現場のスタッフのさまざまな「アジャストメント(調整)」により、日々の仕事が成立していることに着目します。本セミナーには464人の方々が参加され、「レジリエント・ヘルスケア」について理解を深め、意見交換を行いました。

Ⅰ Safety-ⅠとSafety-Ⅱ 患者安全に関する新たな視点
  <座長>
  芳賀 繁(立教大学現代心理学部心理学科 教授)
  <演者>
  Erik Hollnagel(University of Southern Denmark 教授)

Ⅱ 医療安全のヒューマンファクターズ -何に取り組むべきか-
  <座長>
  原田賢治(東京大学大学院医学系研究科医療安全管理学講座 特任助教)
  <演者>
  小松原明哲(早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科 教授)

Ⅲ 安全文化についてもう一度考えてみる
  <座長>
  小松原明哲(早稲田大学理工学術院創造理工学部経営システム工学科 教授)
  <演者>
  芳賀 繁 (立教大学現代心理学部心理学科 教授)
  
      ( ):セミナー開催時の所属

7.手術チームのノンテクニカルスキル~リスクに強いプロ集団~

 平成27年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、「手術チームのノンテクニカルスキル」をテーマとするセッションを設け、外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士の多職種から構成される手術チームが、刻々と変化する手術の局面において、どのようにノンテクニカルスキルを発揮しているのかについて、それぞれの職種の方に講演いただきました。また、同年秋に千葉で開催された「第10回医療の質・安全学会学術集会」における再演では、日本心臓血管外科学会理事長である上田裕一先生(奈良県立病院機構奈良県総合医療センター総長)に基調講演をお願いし、外科医がノンテクニカルスキルを習得し発揮することの重要性について学術的な背景とともにご解説いただきました。本冊子ではこれらのハイライトを紹介しています。

Ⅰ 医療現場の慣習(「人の和」と以心伝心)からノンテクニカルスキルへの展開
  <演者>
  上田裕一(地方独立行政法人奈良県立病院機構奈良県総合医療センター 総長,
       日本心臓血管外科学会 理事長)

Ⅱ 手術チームのノンテクニカルスキル~リスクに強いプロ集団~
  <座長>
  綾部貴典(宮崎大学医学部附属病院 外科学講座 呼吸器・乳腺外科 講師,
       医療安全管理部 副部長)
  中島和江(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部 部長・
       病院教授)
  <演者>
  吉岡大輔(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部・
       心臓血管外科 助教)
  入嵩西毅(大阪大学大学院医学系研究科 生体統御医学講座麻酔集中治療医学教室
       助教)
  加藤貴充(大阪大学医学部附属病院 ME サービス部 主任)
  手塚信裕(徳島大学病院 看護部 手術看護認定看護師)
  
      ( ):セミナー開催時の所属

8.患者とともに実現する安全で質の高い医療
~Resilience・Patient Journey・Empowerment~

 平成28年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、患者のエンパワーメントを通じて治療への積極的な参加を促し、結果的に慢性疾患の管理を成功に導くための、医療者に向けた教育手法である「糖尿病劇場」の実践をテーマの一つに取り上げました。また、同年秋には、医療への患者参加の重要性を患者の視点から提唱しているキャロリン・キャンフィールド先生をカナダから阪大病院にお迎えし、患者と医療者の信頼関係を基盤としたヘルスケアのあるべき姿等についてご講演いただきました。本冊子では、これらの内容を中心に紹介しています。

Ⅰ エンパワーメントに基づく医療者教育
  <演者>
  岡崎研太郎(名古屋大学大学院 医学系研究科
        地域総合ヘルスケアシステム開発寄附講座 講師)

Ⅱ Relationship-based Healthcare for better Safety and Quality
  患者―医療者関係に根ざした安全で質の高い医療の実現
  <演者>
  Carolyn Canfield
  キャロリン・キャンフィールド
     (Department of Family Practice, The University of British Columbia
      Honorary Lecturer (特別栄誉教員))

Ⅲ 慢性疾患患者の patient joourney を支える、expert patient のちから
  ―腹膜透析治療における目指すべき patient joourney についての考察から―
  <演者>
  北村温美(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部 副部長・
       助教)
  
      ( ):セミナー開催時の所属

9.医療機関におけるガバナンス ー 人・組織・社会を有機的につなぐ ー

 平成28年度および平成29年度の国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、医療機関におけるガバナンスにフォーカスを当て、ガバナンスという言葉のルーツを含めた概念や、組織におけるガバナンスの在り方や具体的な方法論についてご解説いただきました。本冊子ではこれらのハイライトを紹介しています。

Ⅰ 組織のガバナンスとは何か(私見)
~教授・病院長・医学部長・独立行政法人理事長・学会理事長の経験から~
  <演者>
  嘉山孝正(山形大学医学部 参与
       先進がん医学講座 教授)

Ⅱ ガバナンスと情報共有
  <演者>
  児玉安司(弁護士・一橋大学客員教授)

Ⅲ 初期研修を含む外科領域における教育・指導のあり方
  <演者>
  山崎芳郎(独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院 病院長)
  岩上佳史(大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学 特任助教)
  
      ( ):セミナー開催時の所属

10.自己選択型医療のすすめ

 平成30年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、患者と医療者による協働型医療に焦点を当てました。本冊子では、患者自身が医療者に対して積極的に意思表示を行う自己選択型医療について、そのハイライトを紹介しています。

自己選択型医療のすすめ
  <座長>
  小松康宏(群馬大学大学院医学系研究科医療の質・安全学講座 教授)
  <演者>
  鈴木信行(患医ねっと 代表)
  
      ( ):セミナー開催時の所属

11.COVID-19対応にみられるレジリエンス

 令和2年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、COVID-19パンデミックという大きな擾乱の中で医療チームが発揮したレジリエンスに焦点を当てました。本冊子では、そのハイライトを紹介しています。

  
  新型コロナウイルス感染症診療下でのレジリエンス
    <演者>
    小野和代(東京医科歯科大学 統合診療機構 機構長補佐
         東京医科歯科大学医学部附属病院 医療安全管理部
         GRM、感染管理認定看護師、認定看護管理者)

  薬局をクラスターにするな!京大SPH 薬局情報グループ COVID-19対策プロジェクト
    <演者>
    岡田 浩(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系健康情報学
         薬局情報グループ 特定講師)

  弾よく乱を制す新型コロナと災害医療の共通点
    <演者>
    後藤隆久(横浜市立大学附属病院 病院長
         横浜市立大学医学部 麻酔科 教授)
    
        ( ):セミナー開催時の所属

12.COVID-19対応にみられるレジリエンスの発揮 - 大阪府における取り組み-

 令和3年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーでは、COVID-19パンデミックという大きな擾乱の中で医療チームが発揮したレジリエンスに焦点を当てました。本冊子では、特に大阪での取り組みについて紹介しています。

COVID-19対応にみられるレジリエンスの発揮 - 大阪府における取り組み-
  <座長>
  浅利 靖(北里大学 副学長・医学部長 医学部 救命救急医学 教授
       北里大学病院 救命救急・災害医療センター長)
  <RHCの視点から>
  中村京太(大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部
       特任教授(常勤)・部長)

  大阪府におけるコロナ対策の戦略と展開
    <演者>
    朝野和典(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 理事長・
         大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議 座長)

  大阪コロナ重症センターの運営-走りだす前、だした後-
    <演者>
    藤見 聡(大阪急性期・総合医療センター高度救命救急センター センター長
         大阪コロナ重症センター センター長)

  危機的状況における決断とは - 新型コロナウイルス感染症対応からの学び-
    <演者>
    高橋弘枝(公益社団法人大阪府看護協会 会長)

  変動と混乱下における適応力 - 大阪コロナ重症センターでの経験から-
    <演者>
    川崎 哲(大阪大学医学部附属病院 小児医療センター 看護師)

        ( ):セミナー開催時の所属

13.医療現場に潜むアラーム疲労への先行的安全マネジメント

 本冊子では、令和4年度国公私立大学附属病院医療安全セミナーのハイライトの一つである「アラーム疲労」について、紹介しています。

  北里大学病院におけるMACT(Monitor Alarm Control Team)活動
    <演者>
    新井正康(北里大学医学部附属病院新世紀医療開発センター
         横断的医療領域開発部門
         侵襲制御・生体危機管理医学(集中治療医学)教授

        ( ):セミナー開催時の所属

ブリーフィング・ディブリーフィングに関する教材

学習の目的

 安全で質の高い医療を提供するためには、テクニカルスキルとノンテクニカルスキルの両方が必要です。
そこで、Surgical fire(サージカルファイア、外科的処置に伴う発火事故)のうち、気管切開時の発火事故に関して、
“テクニカルスキル”及び“ノンテクニカルスキル”の観点から、予防および対応のポイントについて学習するための教材を試作しました。

学習のポイント

1テクニカルスキル

  • ・Surgical fireが臨床上、起こりうる事態であることを知る。
  • ・気管切開時の発火事故の発生メカニズムを知る。
  • ・気管切開時の発火事故の予防上の注意点を知る。
  • ・気管切開時の発火事故への対処方法のポイントを知る。

2ノンテクニカルスキル

  • ・チーム医療におけるブリーフィング(事前打合わせ)およびディブリーフィング(振り返り)の重要性を認識し、実際の方法のイメージをつかむ

教材(試作品)

1講習会資料(平成23年度研修医向け)

2DVD “気管切開中の発火 ~ 教授 Meinoshin ~”

3部構成
Ⅰ.ブリーフィング
Ⅱ.発火への対処
Ⅲ.ディブリーフィング

※本ビデオの内容及び利用方法は、医療従事者からのフィードバックを踏まえブラッシュアップしていく予定です。

2動画 “手術室発火事故の予防と対処”

Anesthesia Patient Safety Foundation(麻酔患者安全財団, APSF)の作成した手術室内におけるさまざまな発火事故の予防と対処に関する動画“手術室発火事故の予防と対処”について、APSFの許可を得て、中央クオリティマネジメント部において日本語字幕付き版を作成しました。

   Prevention and management of operating room fires
   (手術室発火事故の予防と対処)日本語字幕付き版

リソース

【気管切開時の電気メスによるSurgical fire】
【手術室におけるSurgical fire全般】