生殖医療センター

診療内容

 日本における少子化は世界に類を見ない早さで進行しています。このような環境の中で、お子様を希望されるにもかかわらず妊娠しない、あるいは流産を繰り返すカップルは、全てのカップルの約10%以上存在するといわれています。このようなカップルに対しての総合的な支援策の確立は、単なる医学上の問題であるだけでなく、少子化抑制政策においても重要な問題であると考えられます。
 以上のようなコンセプトのもとに、昨今の不妊/不育症治療に対する社会的ニーズの高まりを背景に、泌尿器科・産科婦人科が中心となり、生殖医療センターを発足させました。妊娠後の周産期管理や遺伝相談のために、小児科・総合周産期母子医療センター・小児外科・遺伝子診療部のスタッフの協力を得ています。また、特に基礎疾患をお持ちの方の不妊/不育症克服のため、すべての診療科と有機的・統合的に関わることができる体制を作っています。

特色

 生殖医療センターでは生殖医療専門医を含むスタッフを中心に、胚培養士・看護師らから成る生殖医療チームが診療を行っており、さらに大学病院の特徴をいかし他科とも緊密に連携し専門的な診療をより幅広く受けることができます。

さまざまな疾患をもちながら妊娠を希望される方へ(合併症不妊):

 内科疾患、泌尿器科疾患、婦人科疾患、遺伝性疾患、臓器移植後など様々な疾患(合併症)を持たれている方にも、他科と連携し集学的治療を行いながら、妊娠のチャンスを増やす方法を探索しています。できるだけ安全な妊娠・出産のためには妊娠前に合併症の状態が安定していることが大切です。また妊娠されてからもそのまま引き続き当科で妊婦健診を受けていただくことが可能です。他科との緊密な連携により、不妊治療・妊娠・出産を絶え間なく継続的にサポートいたします。

男性不妊疾患をもちながら妊娠を希望される方へ(男性不妊):

 男性側の不妊原因として、乏精子症・無精子症・精子無力症など、泌尿器科医による専門的診療が必要となる場合も少なくありません。体外受精・顕微授精などの高度生殖医療が必要なカップルのうち、精子を泌尿器科手術で採取しなければならない乏精子症・無精子症の患者さんについては、泌尿器科・産科婦人科がすみやかな連携をとり、十分なインフォームド・コンセントのもとに共同で治療を進めていきます。

不妊治療に伴い手術などの外科的治療が必要な方へ(生殖外科手術):

 手術治療を含めた外科的治療を要する可能性のある不妊疾患(子宮奇形、子宮筋腫や子宮内膜症などの良性腫瘍、子宮頚管狭窄、帝王切開瘢痕症候群など)に対して、外科的治療が本当に必要か再度検討の上、必要があれば積極的に実施しています。同一施設内で手術を実施することで、手術前の説明・検査および手術後の不妊治療の再開などをスムーズに行うことができます。

がんなどの治療前後で妊娠を希望される方へ(妊孕性温存治療):

 がん治療や膠原病の治療などを目的として抗がん剤や放射線治療を行った場合、これらの治療後に精巣・卵巣機能が低下し、妊娠しにくくなる可能性があります。このような患者様には、医学的適応により妊孕性(妊娠できる能力)を温存するように取り組んでおります。成人だけでなく小児・若年がん患者さんの妊孕性温存療法にも、小児科・小児外科などと共同で積極的に取り組んでいます。妊孕性温存療法は、原疾患の治療を行う主治医によって妊孕性温存を考慮することができると判断されている場合に実施可能であるため、主治医と十分な連携をとりながら治療に取り組んでいきます。
当院ではご本人の意思に基づき、男性の場合は「精子凍結」を、女性の場合は「受精卵凍結」「卵子凍結(未受精卵凍結)」「卵巣凍結」行っており、「がん・生殖医療ネットワーク」と連携し治療実施登録施設としても稼働しています。
 なお、瀧内副センター長が、医学振興銀杏会(大阪大学医学部同窓会を母体とする公益社団法人)シンポジウムで市民の皆様向けに、「AYA世代がん患者さんの妊孕性 (=妊娠できる力)温存について」を講演しました。 2021年12月25日まで公開されておりますので、よろしければご参照下さい。
         ⇒(講演のYouTube動画はこちら)


卵巣機能が低下していると診断された方へ(卵巣機能不全):

 卵巣は主に「健康を維持する」機能と「妊娠出産を担う」機能があります。卵巣機能不全では、卵巣自体が萎縮し卵巣ホルモンが分泌できないため、月経が不規則になったり無月経となったりします。このような状態では卵巣ホルモンを補充することで月経は発来し「健康を維持する」機能を補うことはできますが、卵子が枯渇するため妊娠することが難しい場合があります。若年でも卵巣機能が低下する(早発卵巣不全)こともあるため、積極的な不妊治療をできるだけ早期に開始して、妊娠・分娩を目指します。

妊娠にむけて合併症や内服薬などにご不安がある方へ(カウンセリング):

 ご自分がお持ちの病気や内服している薬について、妊娠前に十分に理解して安心して妊娠にむけての治療に取り組むことが大切だと考えており、またお持ちの病気が落ち着いている状態で妊娠することが安定した妊娠にも重要です。妊娠した場合に、妊娠が合併症に与える影響、また合併症が妊娠に与える影響などに関して、不妊検査・治療と並行しながらカウンセリングを行います。また当院は2019年4月からより妊娠と薬情報センターの拠点病院の一つとして指定されており、この情報をもとに現在使用しているお薬と妊娠に関する影響などに関して相談していただくことができます(予約制 別途自費負担が必要になります)。

上記のように合併症などを有する方に対する集学的な治療が可能であることが当院の特色でありますが、合併症などをもたない患者様の治療も同様に積極的に行っております。妊娠を考えておられる皆様を総合的に丁寧にサポートいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

主な治療内容

 不妊/不育症の診療は、男性側、女性側の片方のみの診療ではなく、カップルに対する診療が基本です。不妊症の約半数の原因は男性側にもなんらかの異常があると考えられており、カップルで共に治療に取り組んでいく必要があります。検査結果などをふまえ、もしも妊娠を妨げる原因が見つかれば、その治療を行います。それと同時に、妊娠に向けた治療を行います。いずれの患者さんにも検査・治療のもつ意義と副作用について十分に説明し、納得して頂いた上で治療に当たるようにしています。

一般的な生殖治療:
 年齢・卵巣機能・精液所見・患者さんの妊娠に対する希望などをふまえて、「タイミング法」「人工授精」「体外受精・胚移植(IVF-ET)」「顕微授精(ICSI)」などの治療を行っています。

男性不妊:
 重症不妊症である非閉塞性無精子症に対する顕微鏡下精巣内精子採取術を行っています。また、精索静脈瘤手術にも顕微鏡を使用する顕微鏡下内精静脈低位結紮の成績がよく、合併症も少ないことから、希望するカップルは増加傾向にありますが、当院でも実施しております。さらに他院で精索静脈瘤手術を施行した後の再発症例に対する経皮的静脈瘤コイル塞栓術も積極的に取り組んでいます。また、癌治療に伴う男性不妊症にも対応しており、進行性精巣腫瘍に対する射精神経温存後腹膜リンパ節郭清術や化学療法前の精子保存の相談も随時受け付けしています。

体外受精・胚移植:
 直接卵巣から卵子を体外に取り出し(採卵)、卵子と精子を受精させ、受精卵が胚に成長した時点で子宮内に戻し(胚移植)、妊娠へ導く方法です。卵子や授精の状態などは一般不妊検査やタイミング法・人工授精では確認することはできず、体外受精・胚移植を実施し体外で直接確認して初めて評価できるため、検査もかねた治療になります。採卵を行うための卵巣刺激法は、short法・long法・antagonist法・random start法など個人にあった最適な方法をご提案させていただきます。

不妊症:
•排卵因子:内服さらには注射による排卵誘発を行います。必要に応じて、超音波検査による卵胞計測を行います。
•卵管因子:必要があれば手術療法のほか、体外受精・胚移植などを行います。
•子宮因子:子宮鏡検査、経膣超音波検査やMRI検査ならびに治療を行います。
•男性因子:当院泌尿器科医師による診察・検査・治療(内分泌検査・染色体検査・手術療法)を行います。
•その他:子宮筋腫・子宮内膜症など状況に応じて手術療法も含め検討します。
•原因不明:治療を段階的に進めるとともに年齢や卵巣機能などを考慮して、体外受精を含む高度生殖医療まで積極的に進めます。

不育症:
 泌尿器科・産科婦人科の適切な原因検索と最新の研究結果などをもとに治療を行います。また必要に応じて遺伝子診療部で遺伝カウンセリングを受けていただきます。当院に通院・治療をされている皆様を対象に、臨床心理士とも連携し、ご希望に応じて皆様のお気持ちや生活のことなどについてのお話を伺いながら一緒に治療に取り組んでいきます。

妊娠成績:
2020年
臨床的妊娠率(人工授精): 10.1%
臨床的妊娠率(胚移植): 34.8%(40歳未満 32.1%, 40歳以上 35.3%)
卒業率(妊娠卒業数/同時期に妊娠治療を希望された初診数): 71.8%

着床前診断(PGT-A 臨床研究)
 着床前診断 (PGT-A: Preimplantation Genetic Testing Aneuploidy)は、生殖補助医療で得られた胚(受精卵)の胎盤となる細胞から複数個の細胞を生検し、胚移植前に染色体の異数性を診断する検査です。大阪大学医学部附属病院はPGT-A臨床研究分担施設として承認・登録されています。
詳細は大阪大学医学部産婦人科(生殖医療センター)HPをご覧ください。

紹介時のお願い

 泌尿器科・産科婦人科外来で対応いたします。できるだけ保健医療福祉ネットワーク部を通じての予約をお願いします。

外来受診のご案内

診療受付時間

初診 午前8時30分~午前11時00分
再診 午前8時30分~午前11時30分
予約再診 午前8時30分~午後3時00分

※阪大病院では初診の方は医師の紹介状が必要です。

外来診療日

月~金曜日

休診日

土・日曜日、祝日、
年末年始(12月29日~1月3日)

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